一考さま。
さまざまにお辛き御身のうへ、心よりお見舞ひ申し上げます。葡萄の安酒しか受けつけぬ身となりてより、純粋なるモルトウイスキーにおそれをなし、他用のありしことも重なつて、ひとまづの千穐楽に参ることあたはず、失礼をばお詫び申し上げます。再開の暁にはぜひとも御挨拶にうかがひたく存じます。
さて、腓返りを「こぶらがへり」と云ひしこと、日本国語大辞典第二版には載つてをります。そもそも「こむら」を「こぶら」と云ふ語源に四説あり。今、用字を無視して紹介いたせば、
1 「かぶら」(根茎)と通ずる。根茎と同じく離れた所の意。こは「大言海」の説。
2 「こはら」(小腹)の転。
3 股(ゆら)肉に次ぐ小肉であることから「こゆら」の転。
4 「こぶ」は瘤の意。「ら」は「らか」の反。
「こぶらがへり」の用例として日本国語大辞典が挙げしは「雑談集」(1305)なり。
眼鏡蛇のcobraの例としては、「蘭説弁感」(1799)があり、いづれにしても「こぶらがへり」とは無縁のやうでありまする。
しばしば薬局の看板に「脚のつる方、応相談」などと書かれてゐます。年を取るからといふだけではないのかもしれません。
どうかくれぐれも御身大切に。一考さんのお話をうかがふ、否、お目にかかるだけで嬉しくなる者、あまたゐることをお忘れなく。