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ときめき   一考   

 

 何度か掲示板にご登場願っているのだが、とりあえず、ここではTさんとしておこう。Tさんがひどく落ち込んでいる。失恋に見舞われたようである。70になろうが、80になろうがひとは恋に身を焦がす。歳をわきまえず、恋する相手は常に若いのが男の常。80の男が90の女に恋をしてもよさそうなものだが、男の脳内構造はそのように出来ていないらしい。
 Tさんは3年前に女房と死別している。寄る年波と相俟って人生がもっとも遣る瀬なくまた切なく思われる時節である。近隣にそれとは表記していないが、キ○○トと称する熟女バーがある、所謂出会い系である。故あってそこの女性と親しくなった。訊くと値は1万5千円、出会い喫茶のように二十歳の女とはいかないが、店側への余分な支払いは生じない。桜町界隈に同種の店は2軒しかないという。その店を念頭に、Tさんに女でも買えばと薦めるのだが、彼はときめきがないのは嫌だと応える。少なからず、その意見にわたしは賛成する。
 Tさんには付き合っている女がいて、短い期間だが2階に住まわせたことがある。その後、彼女は独立してカラオケスナックを営んでいる。Tさんは頻繁に訪れていたが、ある日悶着が起きた。彼女の新しい男の前で、この男と付き合っているのかと詰問したのである。当然男は怒り、刃傷沙汰にまでは至らなかったものの、暴力事件となって警察のお出ましと相成った。Tさんはさんざん彼女に注ぎ込んだものの、ストーカーとして任意同行、警告書へのサインを強要(彼の弁)された。
 Tさんとわたしは親しいのだが、今回の一件は彼女に分がある。Tさんはボーダーライン型の典型であって、孤独を避けるための行為なのだが、結果として人間関係が濃く、相手を支配しようとする気違いじみた努力に至ったのである。
 福島章はその間の消息を「自分が相手を好きという感情は、どんなに強くても恋愛感情であって恋愛妄想ではない、妄想とは、証拠・根拠がないのに相手が自分を好きであると信じる、逆に相手が自分を嫌っている証拠・根拠があっても相手が自分を好きであると信じる、信じて疑わないことである」と述べている。Tさんはその一件をわたしに相談したという一点に於いて、異常者でなければ、ストーカーでもない。ときめきまでは正解なのだが、ときめきを求めるがあまり陥ってしまった恋愛妄想、関係妄想の処理方法に過ちがあったのである。刻が移ろうように不変の愛などと云うものは存在しない。年長者に失礼だが、一言で申せば、恋愛に未熟だったということになろうか。
 彼はわたしに話したことによって、落ち着きを取り戻すと思うのだが、現在は悄気返っている。そのような彼を見ていると、なぜかわたしまでが悲しくなってくる。残された時間はいくらもない、ときめきは人生でもっとも大切なものだと思うが、多くの人は心の内に秘めたまま朽ち果ててゆく。


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2017年07月04日 04:25に投稿された記事のページです。

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