昔、ジリオラ・チンクエッティの「愛は限りなく」という映画があった。「夢みる想い」、「愛はすぐそこに」、「初めてのキッス」、「ナポリは恋人」、「あこがれはいつも心に」、「アネマ・エ・コーレ」、「愛は限りなく」の7曲が歌われている。チンクェッティは1963年のカストロカーロ新人コンテストで優勝、「愛は限りなく」が公開された3年後に「雨」を歌っている。当時日本はサンレモ音楽祭をはじめとするカンツォーネ・ブーム、本国イタリアを凌ぐ人気だった。
愁いをたっぷり含んだカンツォーネで、邦題は陳腐だが名曲。若い女性が喋るイタリア語は美しいと西脇順三郎が賛嘆しているが、典型の一であろう。シルヴィ・ヴァルタンの「アイドルを探せ」が1964年、翌65年にはミーナの「Un anno d'amore(別離)」が大ヒットしている。この頃、わたしはジャズと共に欧州のポップスもよく聴いていた。