赤坂で店を営んでいた折はパイプたばこも紙巻きの葉巻も同じ赤坂のプラセールを贔屓にしていた。特におばさん(当時のわたしはおじさん、今は爺さんである)とは懇意になり、行くたびに試供品を分けてもらっていた。
なにかの書物で初心者向けと聞きかじり、Borkum を喫んでいた。種類が多いので、結構満足していた、なかでも Champagne が好みだった。今回、田畑たぼこ店で COLT Cherry を買ってみた。Borkum は香りが沈んだようなところがあったが、それと比して遙かに葉がウエットで、香りが開いている。ウエットと香りの開き方に関係があると思うのだが、わたしには分からない。間口を少々拡げるために、シャグ(手巻きタバコ)専用の小型パイプも買ってきた。手巻きたばこをパイプで嗜むのが流行っているそうな。
なにごとに寄らず、師に教えを請うのがもっとも手っ取り早い遣り方なのは分かっている、しかし、煙草だけは師に恵まれなかった。パイプの選び方から使用法、パイプ葉の選択にいたるまで我流である。最悪なのは重々承知、今にして、残念に思っている。
ひとは生涯にさまざまなことを学ぶ。例えば、書物は山本六三、料理は角田哲夫から教わった。セックスについてなら、子供の頃から福原の浮き世風呂のお姉さんから手とり足とり教わった。しかし、教わった性技を用いたことは一度もなかった。仮に使えば変態と罵られるだけである。吉田一穂は懐妊の二年前に一度致しただけという、それでご子息が生まれている。セックスのようなものは我流で、みなさん満足なさっている。満足どころか自信さえ持っている。それで良いのである、触らぬ神に祟りなし。