重い心臓病の治療のため、アメリカでの移植手術を必要としている沖縄の女の子のことがニュースで流れた。幾度となく聞くはなしだが、今回は主治医がコメントを添えていた。免疫抑制剤を生涯飲み続ける必要や、感染症予防のため不自由な生活を強いられることなどを指摘し、移植とは新たな病を背負い込むに等しいと話していた。
その通りなのだが、「新たな病」は命と引き替えに身体に刻み込まれる宿痾のようなものである。医師の意見はどのようにも取られるものだったが、娘の命を案じる親の身になれば、いささか酷と云うか、主治医としての危うさすら感じられる意見だった。
心臓であれなんであれ、臓器移植に免疫抑制剤やステロイド剤は付きもので、わたしも多くの薬を生涯飲み続けなければならない。それらの薬は強烈な副作用を持っていると同時に、自らの免疫を抑制するのであるから、健康なひとならどうと云うことのない種類の感染症がわれわれにとっては命取りになる。美空ひばりや市川團十郎のごとく、風邪は間質性肺炎を呼び込み、即、死を意味する。
私自身、肺炎球菌ワクチンは当然のこと。昨今爆発的に流行りつつあるニューモシスチス肺炎(PCP)の予防薬、バクタを飲んでいる。移植手術以来、久しぶりの服用である。
免疫抑制剤の副作用に、悪性腫瘍、出血性膀胱炎、骨髄障害、間質性肺炎・肺腺維症、肝障害、消化管障害、腎障害、高血圧、高脂血症などがある。多くの薬は尿路系に刺戟を与える特性があり、服用中は水分を多く取る必要がある。怠ると、尿路に悪性腫瘍が発生する。
乳幼児に1日2回の薬の服用、休みなくつづく水分の摂取は苦痛以外のなにものでもない。水を抱えて逃げ回る子供を追うのが、親の最大の為事になる。そして親自身、迂闊に感染症に罹ることは許されない。