山口小夜子さんの「意図的なことをなくす 自分をなくすことから本質に触れる」との言葉。いかにも横須賀さん好みの言葉である。「残日を指折りかぞえて」を書きながら、眼中に常に小夜子さんがいらした。
自分をなくす。自分を空しくする。結果本質に触れるのであって、恣意的にふれるのでない等々。
「あなたにだけは紹介しておきたかった」「随分と意図的ですねえ」「分かってるよ、良いんだよ」「まるで恋人同士ですね」「そう云って貰いたかったんだ」
「脚がきれいなんだよ」「分かっていますよ」「でも、きれいなんだよ」「だから、分かってるって」「でも、きれいなんだよ」
澄み切った関係、透明な恋人たちのような虚しさ、虚しさに虚しさが重なり合って、枠物語や紋中紋を構造してゆく。