釧路市漁協が作り販売している「ミスターししゃも」。云うまでもないが、本物のししゃもである。今年一杯で閉鎖される近所のイオンに置いている。3匹480円、神戸の在にとっていささか値が張るようである。買っているのはわたしぐらいなもので、300円になり、半額になり、やがて棚から消えてゆく。
はなしは変わるが、引っ越してから牛肉や豚肉をまったく食べなくなった。200グラム買って来たのはよいが、2箇月を経てまだ冷凍庫で眠っている。日々、さまざまな魚一色である。
くん製風味とあるが、くん液すなわち木酢液を使っている。燻蒸したわけでないので、正確に風味と記載されている。これが肉類の加工品、生ハムからハムやソーセージだとインチキ表示が未だに罷り通っている。
ししゃもは遡河回遊魚であり、晩秋に産卵のため溯上する。この時期の卵を持った雌を子持ちししゃもと云う。酒肴として珍重されるが、実は雄の方が高価かつ美味である。また雄雌共に大きい(太い)ほど味がよいとされるが、それには疑問がある。と云うのは、赤坂のスーパー吉池で小振りの雄を目刺しにしたものが売られていたが、過去食したししゃものなかで最も旨かった。
雄の臀鰭は、10月頃からの性成熟に伴い二次性徴として伸張する。この現象は、カワヒメマス の背鰭およびオイカワと同様に抱擁器官として使われ、受精率を高めるために重要な役割を果たす。写真に映っている臀鰭も伸張が顕著である。鮭同様、全体が変色し、赤みが濃く(婚姻色)なり、オスの体には所々、墨のようなまっ黒な模様が入るようになる。また頭全体がこの時期特有の嶮しい形相になり、上方へ尖がっている。
追記
書くまでもないが、ししゃもは世界中で北海道南部の太平洋側だけに生息する日本固有の貴重な魚。全国の小売店で販られている「子持ちシシャモ」は「カペリン」または「カラフトししゃも」と云うししゃもの代用魚。代用品とは申せ、属はまったく異なる魚であり、遡河回遊魚ですらない。風味や食感は本物のししゃものそれと比してまるで異とする。