引越してから油かすを屡々購入する。油かすとは、食肉から食用油脂を抽出した残滓を利用した食品だが、東京では見たことがない。牛、馬、豚、鯨、鶏など、さまざまな油かすがあるが、わたしがここで云うのは、牛の小腸を熱して牛脂を取り出したもので、お好み焼きやうどんの具として広く用いられる。
中上健次に倣って被差別部落を「路地」と呼称する上原善広は油かすを「被差別部落のソウルフード」と呼ぶ。大阪河内のかすうどん、富士宮やきそば、長野のおたぐり、広島のせんじがら、おでんのコロなどは良く知られる。
昔の神戸のお好み焼きには必ず油かすが香り付けに這入っていたが、最近は這入っていないものが多くなった。本来安価なものだったが、東京にいた15年のあいだに高級品になってしまった。