このところお浸しが続いている、菜の花や菠薐草の類いである。茹でるには色や味などを良くするために少量の塩を入れる。他に蓮根や独活などの色を白くあげたいときには食酢、筍の灰汁抜きには米糠、蕨や薇には重曹を用いる。発色のための塩は茹でたあと、さらに冷水に晒すので塩は完全に抜ける。
頂戴するのは白だし、醤油、芥子味噌、酢味噌などだが、味噌の場合はぬた和えも造る。少量の海産物、烏賊や貝類が手に這入るからである。一人住まいだと、この少量が常に問題となる。キャベツやレタスなど野菜はとにかく小さいものを選んで買う、捨てたくないからである。
近隣のスーパーは野菜類に限らず、売り切れを常とする、謂わば理想的なスーパーである。
食品業界には1990年代に始まった「3分の1ルール」という商習慣があり、メーカーや卸業者は、製造日から賞味期限までの最初の3分の1の期間内に小売店に納品することが求められている。納品期限が過ぎたものは、賞味期限が残っていてもメーカーに返品され廃棄されることになり、それが食品ロスを生み出す大きな要因となっている。
要するに、仕入れを売り切る分量に限ればロスは出ない。ところが、そのようなスーパーはほとんど存在しない。書店の委託販売と同じで、わが国固有の悪しき商習慣である。