京都は昔から市の町。寺や神社の境内に市が立ち、骨董・生活雑貨から新鮮な野菜や特産品などが並ぶ青空縁日は、京都人にとっては欠かせないものだった。京都の佐伯直寛さんの影響で種村季弘さんも骨董(がらくた)市にはまり、北野天満宮の天神さんや東寺の弘法さんなどへ機会あるごとに出掛けていた。
今回購入したのは古伊万里染付蓋付碗だが、種村さんも古伊万里を好んでいらした。所謂民芸に見られる殊更めいたところがなく、日常生活にとけこんだ風情、佇まいがお気に召したのであろう。拙宅へ来られた折も陶器より磁器を多く賞でていらした。
焼締めや自然釉でなく、色絵磁器を好み、細かい窯傷は当たり前、完品でなく逆にカケやニュウそのものを趣として捉えていた。焼き物に限らず、欠け、疵、歪みを内包した人を好んだ種村さんに相応しかった。