ひだる神は憑物の一種、とくに空腹時に峠道で憑かれることが多い。ダリ神、ダリ仏、ダニ、ダラシ、ジキトリ、ヒモジイ様、イザリ神などともいう。行逢神に同じ。愛知県北設楽郡の花丸峠には非人の行き倒れを奉ったというダリ仏の石像があるそうな。行き倒れの石像であれば、さぞかし瘠せたダリ仏かと思う。
ひもじい(形シク)、ひもじがる(自ラ四)、ひもじげ(形動)、ひもじさ(名)、「ひだるい」とも。
病院に峠道はないが、ひだる神はうじゃうじゃいる。わたしの病室にもいるが、こちらは神などと云う代物にあらず、綴れを纏ったヒモジイ様が似合いである。このヒモジイ、何時までわたしにまとわりつくのか。小腸の内視鏡検査が済めば即解放されるかと云うと、そうでもなさそうである。結果次第で下血の心配があれば一層強く取り憑きそうである。
羸痩(るいそう)は身体に浮腫がみられないので乾性飢餓とも云う。この場合、水をまったく摂らなければ1週間くらいで死亡するが、水を摂取すると20〜40日間は生存可能と云われる。羸痩の逆は栄養失調症で、尼崎で虐待や監禁の結果、飢餓死を招いた事件があった。犯人は警察の留置所で縊死した。
さて、水を摂取すると20〜40日間と書いた。わたしの場合は20日目だが、点滴を注入しているので死にはしない。ただし、身体はますます見窄らしくなってゆく。