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残存機能   一考   

 

 前項で書く必要のないことを認めた。というのも、のんちさんからメールが這入っていたからである。mixi経由のメールだが、わたしはmixiを見ないので、随分と前のメールだろうと思う。メールは近況報告にはじまる。
 「4月2日に、病院でケアワーカー(ヘルパー)として常勤になりました。認知症のすすんだ高齢者の方が主な患者さまです。陰部洗浄、おむつ交換、いろうをしていらっしゃる患者さまのチューブをきれいにしてさしあげる業務、シーツ交換、清掃等、とてもやりがいのある仕事です。病院に入って気づいた事があります。それは大学で学んだものは、ほとんど現場では活用できないという事です。例えばこちらがやれ音楽療法をやりましょう、ピアノを弾いて皆で歌いましょうと言っても、残存機能が限られた患者さまには不適切ですし、音楽がきらいな患者さまもいらっしゃいます・・・」
 胃瘻と残存機能のふたつの言葉が目に染みる。このところの長期入院で患者とその人格の問題に心を悩ませてきたからである。健康は意図して手に入れるものではない。病とは意志力や精神力といったものが一切通用しない世界の出来事である。要するに、理不尽にはじまり、理不尽に終わる。震災と同じで、弁証法や思索を持ち込んだからといってどうこうなる種類の事象でない。鴨長明に倣って、自らの心の弱さを凝視告白するの他あるまい。
 わたしは胃瘻以外の陰部洗浄、おむつ交換、シーツ交換、清掃等を経験した。特に肛門の清掃にはいろんな意味で衝撃を受けた。そしてどうあっても健常者に理解されないのが、人格の最後の砦が排泄だという事実である。もちろん、排泄が人任せになったからと云って、人格がなくなるわけではない。ただ非常に大きな節目であり、変わり目だと思う。迂闊なことは書かれないのでこれ以上はやめる。
 今回の入院でリハビリテーションの世話になったが、こちらは残存機能の鬩ぎあいだった。患者はわたしを含めて一人残らず障害者で、最初は目のやり場に困った。かかる心中にのんちさんの現在があるかと思うと、いささか同情したくなる。

追記
 のんちさんへ、わたしのメールアドレスは掲示板の最下段で公開しています。今後はそちらをどうぞ。


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2012年12月05日 00:08に投稿された記事のページです。

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