水元公園の金魚だが、生きて行くに最小限必要な餌しか貰っていない。金魚すくいの金魚の飼育法なのだが、もっとも病気に罹らない育て方でもある。
通常、当歳魚は品評会の花とされる。従って、当歳と云っても五、六センチにまで育てる。限界まで大きく育てなければ品評会で盆に乗ることはない。要はミジンコをはじめとする餌を限界まで与えるのである。ところが、水元公園の金魚の体長は二、三センチしかない。体積にすれば十分の一以下である。
良い悪いを云っているのでない、そのような育て方もあるのかとそれだけである。ただ、わたしには貧相な金魚が可哀相に思われる。金魚とくに蘭鋳は人の手を放れては存在それ自体が危うくなる。そのようなデカダンな存在であればこそ、当歳で花と咲くのである。その妖しげな花の表皮、絢爛たる皮膚の色調にひとは魅せられる。