自転車に乗られないものかと跨がってみる。10メートルほど走って諦めた。激痛に堪えられない。当然、それなりの辛抱はするつもりだった。しかし辛抱は辛抱であって、それが拷問であっては困る。
傷口を詳述すると、事前に彼女の左側の腎臓を摘出するのだが、上端は大動脈から分枝した前腎動脈で切断、下端は腎静脈と輸尿管の最下部で切断。これを裏返してわたしの下腹部へ取り付ける。取り付けると云っても、腎動脈をわたしの腎動脈と縫いつけ、あとはぶら下げるだけである。要するに固定しようがないのである。血液は腎静脈を経て下大静脈に到る。
下端の輸尿管はわたしの膀胱左側へ縫いつけられる。かつてのわたしの腎臓は左右とも上端は腎動脈で、下端は膀胱で切断され、あとは放置される。
手術は以上だが、腎臓はその言葉通り、非常に重要な臓器の一つで、血液からの老廃物や余分な水分の濾過及び排出(尿)、体液の恒常性の維持を主な役割とする。
重さは約150gで、縦約12cm、幅約6cm、厚さ約3cm。健康な人ならば、移植などで片方を失っても機能上問題はないとされる。
生涯、免疫抑制剤で抗体を押さえるわけだが、抗体は問題になっても血液型はほとんど問題にならない。ちなみに、わたしの場合、抗体はことごとく合わなかったが、どうあっても拒否すると云った種類の抗体がわたしの中になかったのである。もしかような抗体があった場合、移植は中止される。それは腎臓に止まらない。
追記
手術のついでにわたしの腎臓の結石の成分を調べるため、生検をたのんだところ、手術が二重になると断わられた。その場合は既存の腎臓の摘出になるらしい。それよりなにより、今更成分を調べたところでなんの役に立つと云われてしまった。どうやら、新しい腎臓がよしんば腎結石になるとして、それまでにわたしの寿命が尽きるようである。