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糞尿譚   一考   

 

 かつて、二十一単位の輸血で入院したおり、下腹部の締まりがなくなり、糞尿の垂れ流しを経験させられた。入院に伴う最大の苦痛は手術の痛みもさることながら、やはり糞尿の問題である。今回も紙おむつを利用したが、じゅくじゅくの下腹部は気持が悪い。下腹を左右に20センチ切ったのだが、せめて切開箇所はきれいにしなくてはならない。
 黄色いタオルと白いタオルが三枚、アッチチの状態で身体を拭くために午前中に配られる。拭かれないときは手伝いますから、と看護師は云うが、じゅくじゅく状態の清掃などとてもたのめたものでない。一部は乾燥して腰のあたりにこびり付いている。
 糞尿にまみれればまみれるほど人格が崩れてゆく。せめて髭ぐらいは剃ってと思うのだが、ますます偽善家ぶることになる。
 和式であれ洋式であれ、小便をするときにわたしはしゃがむ。これは昔からの癖である。立って用を足せば回りへ小便が飛び散ることになる。その場合、誰が掃除をするとおもっているのだろうか。かかる男子の傲慢さをわたしは許すことができない。ひとはみな平等であってしかるべき。そう思いつつ生きてきたわたしのこれも老いのなせるありさまか。

追記
 拙宅の寝具は臭わない。病院の蒲団のあれは加齢臭なのだろうか、それとも。

追記2
 自宅のトイレに磔獄門にされてしまった。まったく動かれない。整腸剤は服用しているのだが。免疫抑制剤がいかに強力かを思い知る。


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2012年07月29日 14:23に投稿された記事のページです。

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