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透析患者の体操   一考   

 

 はなしを進める前にシャントについて一言。人工透析を行うに際し、短時間で大量の血液を浄化するための太い血管が必要になる。前腕の動脈と静脈をバイパスさせることによって、静脈血管は次第に怒張し、200ml/min程度の体外循環血流量の確保が可能になる。用いる針も16ゲージ程度の太い針を毎回穿刺しなくてはならない。もともと存在する血管を作為的に吻合するため、血管の炎症や閉塞など副作用を併発することもあり、心疾患を合併する患者には心臓への負担が大きい。

 アクセスログ一覧によると、このところシャント体操なるアクセスが多い。シャント体操が意味するところが分からないが、ふたつあると思う。ひとつはシャントを延いては血管を鍛えるための体操で、早い話が握力である。リストカール、リバース・リストカール、ハンドグリップ等がそれで、シャントを造った後、半年ぐらいは励む必要がある。
 いまひとつはシャントを造った後、身体が萎えてゆくのを防ぐための体操である。こちらはいささか複雑な問題を抱える。透析患者にとってシャントは命そのものであり、絶対に傷付けてはならない大切なものである。にもかかわらず、動脈硬化症を防ぐための最低限の運動はしないといけない、その兼ね合いが難しいのである。
 シャントを拵えたとき、腕にものを掛けない、重量物を持たない、手枕をしない、シャント側を下にして寝ない、腕時計やブレスレットを用いない等々の注意をうるさく受ける。例えば、腕立て伏せにしても自己責任であって、医師は決して奨めない。自転車やオートバイに乗るひともいるが、皮膚一枚を隔てて動脈が走っている。顛倒で動脈を傷付けると二、三十秒ほどで失血死する等々。
 運動は緊張と弛緩の連続、そしてその緊張と弛緩の均衡を喪うのが病である。さらに血管の状態が個々に異なる。糖尿の場合、特に血管は脆い。糖尿でない場合は可能な運動が、糖尿だと不可能とのケースが多い。要するに透析患者の体操に一般論はない。個々の患者の血管の状況に応じて個別に選択するしかない。問われるのは主体性であって、宛行扶持の体操では役に立たない。
 わたしは血管が比較的丈夫である。そして除水が2000までの部類に属しているので、透析後のダメージが少ない。従って透析後、病人特有の廃用症候群(生活不活発病)を防ぐために自転車に乗っている。だからと云って他人に奨められるものではないが。


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2011年12月30日 10:49に投稿された記事のページです。

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