マスコミはTPPで囂しいが、実情はどうなのであろうか。北米自由貿易協定(NAFTA)におけるカナダ、アメリカ合衆国、メキシコの告訴合戦を持ち出すまでもなく、問題になるのはISDS条項における投資家保護だと思うのだが。いずれにせよ、経済界はとっくの昔に個々の国家の垣根を越えたところで活動している。
マスコミが興味を示すのは農協、医師会、電力会社に関するはなしだろうが、わが国の農政、保険医療、電力行政をわたしは信じていない。788パーセントもの関税に守られた米などあってはならないし、小沢が云った農家個別補償は農業従事者を公務員に仕立てるようなもの。それでなくとも、失政によって日本の農業はこの十年で二兆五千億円も減額している。
北原脳神経外科病院(東京都八王子市)が来年早々、カンボジアに進出することが明らかになった。救命救急センターや医科大学を併設する大規模総合病院になる計画。他にも中国、ロシア、ベトナムへ日本の高度な診療と医療機器をセットで輸出するという。当然、富裕層向けである。混合医療は既に国内此処彼処ではじまっているが、その先端に日本は立つようである。どうやら、医学の世界にもTPP賛成派と反対派がいるそうな。
過日、頭痛に悩まされてMRIを撮ったが、脳ドックは保険診療で六万五千円である。最近問題になっている高度医療(一千万とも二千万円とも云われる)を保険診療の対象に加えるなら、その前に対象外になっている難病治療をこそ優遇すべきと思う。ちなみに、難病の治療とはアメリカ製の新薬にも深く関係する。種村さんが飲まれていた薬も保険未対応の抗癌剤だった。
特定疾患医療費助成の対象は現在百ほどだが、その認定基準のさらなる緩和、そして既得権益に固執する業界の自由化が先行すべきでないだろうか。いずれにせよ、わが国の農政も保健診療もとっくに破綻している。
安愚楽牧場の問題点は畜産の金融商品化にある。その底辺には農協の体質と消費者の国産和牛への好みの偏りがある。原発の安全神話と事故が起きてはじめて周章てる利用者の無責任ぶりと似ていないだろうか。わたしは原発の再稼働などもっての他だと思っているが。
TPP発足時の目的は「小国同士の戦略的提携によってマーケットにおけるプレゼンスを上げること」と聞くが、日本を加えた十箇国のGDPのうち、日米で91パーセントにのぼる。日本人は国内のことしか考えないが、振り返れば日米以外の国が反対しないのが不思議である。わが国はTPPはおろか、FTAも結ばずに、他国への侵略をはじめている。