誰かさんが「死の町」との発言で辞任したが、その意見表明はさまざまな問題を孕んでいる。これが状況論でなく、「死の町にした責任はわれわれにある」乃至「まるで死の町である。全力を尽くして何とかしなければならない」だったら辞任に至っていない。当事者意識、要するに情念が端から欠落している。言い換えれば身体性の欠損である。
昨今、そのような人が増えてきた。状況を分析し認識はするものの、そこから先がなにもない。考えがないのか、それとも組み立てができないのか。
TBSの震災報道スペシャル「原発攻防180日の真実」を見た。水素爆発の原因究明の前半は科学的な検証に徹しながら、後半はすこぶる情緒的な構成になっている。全体としては不自然かつ中途半端な番組だったが前半は良い。ただし既知のことばかりである。
全電源喪失に至っても水素爆発は防ぐことが可能だったとチームFは指摘する。まずバッテリーを電源に用いる(弁の開閉のみ)非常用復水器(IC)がある。第二に水素を外部へ逃がすベントである。ICは当初機能したものの、すぐ停止したことに関係者は誰も気付かなかった。
同じく電源喪失で、ベントのための弁を開けなくなったため、バッテリーやコンプレッサー(空気圧縮機)を探したが、現場では備蓄状況さえ把握しておらず、調達に手間取った。また東電によるとバッテリーは四時間しかもたず、バッテリーを取換えようとしたものの、重量があって運ぶだけの人員がいなかったと弁解する。また、ベントを手動で開けるマニュアルがなく、資料を取り寄せての作業となったが、結局間に合わなかった。こうしたことから一号機の原子炉への淡水注入が始まったのは電源喪失から約十四時間後の十二日午前五時四十六分、すでにメルトダウンは発生していた。同日午後三時に一号機は水素爆発を起こした。
http://blog.dandoweb.com/?eid=123210
http://www3.nhk.or.jp/news/genpatsu-fukushima/20110517/1940_1gouki.html
国会が提出を求めた非常時の事故対策マニュアルに東電は通常事故対策マニュアルを供出。しかも十二頁中九頁は真っ黒に塗り潰されていた。思うに、非常時の事故対策マニュアルを東電は作っていなかったのでないかとの疑念が涌く。
なお、これらの検証にチームFは台湾の同型原子炉を取材、非常用復水器なども撮影している。福島第一の原子炉の建屋内部は未だに非公開である。