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胃瘻   一考   

 

 認知症はどのような人間にもやってくる。ただ、生前に発症するかしないかであって運任せのようなところがある。高齢化の進展は認知症患者の増大をもたらす。そして認知症や脳血管障害で困るのは、食べ物を口から摂取できなくなることである。昨今、胃瘻が問題になっているが、現在国内で胃瘻を設けているひとは約四十万人という。
 以前なら老衰死を迎えていた高齢者が意識のないまま何年間も生きている。胃瘻というバイパス手術本来の目的と利用方法が異なってきたようである。
 過日、イギリスでは透析及び腎移植は七十歳以上では行われないと書いた。そのイギリスでは進行した認知症患者に胃瘻の造設は、通常行わない。フランスやオランダ、スウェーデンでも同様である。日本人の寿命が長くなったと云われるが、植物状態での生存になんぞ意味でもあるのだろうか。うやまうべきは死であって、決して長生ではない。
 わたしは人生というものは二十歳までと思っている。二十一歳からは認知症への行進が只管はじまる。腎不全同様、不可逆の行進である。気付いていないのは本人だけだが、気付かないところにこの病の惚けたる所以がある。


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2011年05月26日 20:21に投稿された記事のページです。

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