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一見客   一考   

 

 木村さんから頂戴した葉巻を喫んでいたら一見さんのグループがやって来た。クラブへ通い慣れたひとらしく、お通しを造っているのに客をほっておくのかと云った雰囲気、困った客の類いである。酒の説明を求まられ、説明している最中に他の客がこちらの酒の説明はどうなっていると、五月蠅いことこの上ない。わたしはひとりですからと言訳をすると、じゃあ傭えばしまいじゃないか。雇い人にウィスキーの説明なんぞできるものですか。
 体調不良につき、ゆっくり営業させていただけませんかと云うと、どのような不調なのかと聞く。面倒なので身体障害者手帳を見せると、この手帳は知っていて知人も持っている、高速道路の料金が無料になる手帳だろ、だからどうした。わしは胃を半分除去している。それにまさる病気はあるまい。この辺りで話すのも嫌になる。
 連れのひとりは道楽で新宿でクラブを経営しているそうな、一人の客に数人の女性がつくそうな。では新宿へどうぞと云いたくなる。赤坂へは滅多に来ないらしく、開高健さんが常連だった木家下のことを執念く聞く。当店は高級バーではございません。当店は四人で14000円、他店なら一人でそれ以上は掛かるでしょう。
 帰りしなに今週の土曜日に七、八人で宴会をしてくれと仰言る。先約済みと断わるも、一見で予約をして来たためしが過去一度もない。一見ばかりだとこのようなことも起こる。
 気分直しに、木村さんから頂いた葉巻をおもいっきり吸い込んで昨日の営業を終えた。


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2010年12月16日 23:09に投稿された記事のページです。

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