一日からひとりの生活がはじまった。別れというものは何度経験しても淋しいものである。一人でいるのに慣れるまで一箇月ほど掛かる。あるべきところにあるべきものがない、謂わば風景の損壊がこころに傷をもたらす。わたしはこの手の傷に滅法弱い。身体に異常がなければ酔っ払って誤魔化すのだが、今回はそうもいくまい。とは云え、この淋しさは転居するまでの感慨であって、新宅ではお構いなしになる。否、そうあってほしいと願っている。
余命は計算では三年半、それはともかく、一人なので、昏睡状態だけはなんとか避けたいと思っている。そのために外食も控えている。貧血の理由になるようなことは極力避けたいのである。三年半というのはおそろしく短い。あっという間に過ぎ去るに違いない。だからこそ、不用意な真似はしたくない。存分に手脚を伸ばした三年半であってほしいと願っている。