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モルト会解説   一考   

 

ですぺらモルト会解説(スペイサイドを飲む)

01 アベラワー '90(ブラックアダー)
 ロウ・カスクの一本。シェリー・ホグスヘッドの11年もの、61度のカスク・ストレングス。限定283本のシングル・カスク。
 蒸留所はヴィクトリア朝の美しい建物。モルトもまた、その佇まいに似て、華麗なシェリー・ホグスヘッド。酒質は軽いが甘口のため食後酒に。
 ソフトな口当たりとクッキーの甘さ、我が邦でいえばティー・キャンディの「純露」。とめどなく拡がる芳醇なバニラ香とまろやかな喉ごしはニート(水を加えない)がお奨め。くつろぎの一本。
 ブラックアダー社は1995年にザ・モルトウイスキーファイルの著者であるジョン・レイモンドとロビン・トゥチェクが創業したウイスキー専門のボトラー。ロウ・カスクの発想はきわめて単純でユニーク。大きな木片のみを除去、オリ(沈殿物)も一緒にそのままボトリングする。もちろん、氷点下フィルターもカラメル着色も施さず、すべてはカスク・ストレングスである。

02 オスロスク '89(ケイデンヘッド)
 オーセンティック・コレクションの一本。シェリー・バッドの15年もの、59.5度のカスク・ストレングス。限定636本。
 15年を経てもフッと居なくなるようなあっ気ないフィニッシュに変わりはない。香味とフィニッシュのなさとのバランスがユニーク。クラガンモアと共に、スペイサイドのよさをすべて備えた銘酒。
 ケイデンヘッド社は1842年、エディンバラにて創業。現在はキャンベルタウンを本拠地とし、エディンバラのキャノンゲートとロンドンのコヴェント・ガーデンに店舗を持つ。スコットランド最古のインデペンデント・ボトラーにして、ゴードン&マクファイル社と共に業界の雄。オーナーはJ&Aミッチェル社でスプリングバンク蒸留所とは同資本。「オーセンティック・コレクション」「オリジナル・コレクション」「ボンド・リザーヴ」「チェアマンズ・ストック」等のコレクションがある。着色と低温濾過を施さず、樽と樽とのヴァッティングも一切行わない。一樽限定のシングル・カスクという贅沢な飲み方を世界に広めた第一人者。子会社にダッシーズ社とイーグル・サム社(現キングスバリー社)があり、サマローリ社やスコッチ・モルト・ウィスキー・ソサエティー社等、多くのボトラーに樽を供給している。ユナイテッド・ディスティラーズ社のボトルに満足せず、さらなる刺激をお求めの方にお薦め。

03 クラガンモア・カスクストレングス '93(DB)
 ボデガ・ユーロピアン・オークの10年もの、60.1度のカスク・ストレングスにしてディスティラリー・ボトル。15000本のリミテッド・エディション。
 熟成年とアルコール度数を感じさせない柔らかさを持つ。コーヒーやビターチョコレート、グレインや皮、マディラ酒などの香り。加水すると、スモーキーさからウッディな芳香へ、さらにナッツ系の香りへと変化してゆく。ハーブやスパイス(月桂樹・胡椒の実・ナツメグ等)のキャラクターを内包。さまざまな暗示があり、名状し難い複雑な味わいを呈している。
 他にリフィール・アメリカンオーク・ホグスヘッドの17年ものと29年ものがボトリングされている。

04 クレイゲラヒ19年(イアン・マクロード)
 チーフテンズ・チョイスの一本。43度。
 香りは非常に華やかで、フルーツの香りが濃厚。はじめにビールのホップのようなほんのりとした苦味を感じるが、アップル、ライチ、フレッシュな洋梨の味わい。クリーミーでバランスが良く上品な味わい。心地よい余韻が長く続く。
 1999年に頒された「チーフテンズ・チョイス」は2001年に「チーフテンズ」と変更。ラベル、パッケージ共に一新、フルラインナップとなった。初入荷は14点、同シリーズの売りは、ラム、ポート、シェリーなど、さまざまなカスクが用いられる点にある。ダグラス・レイン社の「オールド・モルト・カスク」と共に今後目の離せないシリーズとなった。他に「ダン・ベーガン」「アズ・ウィ・ゲット・イット」「シールダイグ」「ファラン・イーラ」等、多彩なボトル展開をしている。

05 グレンアラヒ '91(シグナトリー)
 シェリー・バットの8年もの、43度、限定902本のシングル・カスク。
 女性に人気のエレガントな食前酒であり、僚友アベラワーと通底する味わいを持つ。きれのよさは心地よく、極上のフィニッシュに飲み手を誘う。オーク・カスクにはない、アーモンドのようなナッツ系の香りが特徴。
 シグナトリー社からは数種の加水タイプが、ケイデンヘッド社、ゴードン&マクファイル社、スコッチ・シングル・モルト・サークル社、ダグラス・レイン社、イアン・マクロード社からカスク・ストレングスが頒布されている。

06 グレン・マレイ '89(シグナトリー)
 シェリー・バットの9年もの、59.5度のカスク・ストレングス。限定640本のシングル・カスク。
 ディスティラリー・ボトルではシャルドネやシュナンブランの樽を熟成に用いたものが知られる。本品は過去飲んだグレン・マレイのなかで一押し。
 インデペンデント・ボトラーのボトルでは加水タイプがイタリアのドナート社から、ケイデンヘッド社、シグナトリー社、ブラックアダー社、マキロップ社からはカスク・ストレングスが頒布されている。現在グレン・モーレンジの傘下から離れた。
 シグナトリー社はゴードン&マクファイル社、ケイデンヘッド社に次ぐ三番目のボトラー。同社のカスク・ストレングスにあって、ダンピー・ボトルのシリーズは逸品揃い、ぜひ味わって頂きたいモルト・ウィスキーである。上記シリーズに取って代わったカスク・ストレングス・コレクションは同社の総力を挙げての快挙。グレンキース蒸留所で実験的に造られたクレイグダフ等が入っている。

07 グレンロッシー '81(シグナトリー)
 甘口シェリー樽の17年もの、43度、限定595本のシングル・カスク。
 とりわけ81年は珍重される。ヘイグとディンプルの重要な原酒モルトで、ブレンダーの間でも高い評価を受ける。
 清々しい白檀の香りが特徴。ミント香とクリーミーなピート香。U.D社のものと比して円熟度高く、よりスイートな味わい。重厚な香りと切れ上がりの暖かさが絶妙。
 シグナトリー社は1988年、リースで創業。現在はエディンバラに事務所兼倉庫を持ち、ボトリングから保管に至るすべての業務をを行う。「ダンイーダン」「サイレント・スティルズ」等、他では飲めない稀少なシングル・カスクが多い。ヨーロッパ向け限定商品として「アン・チルフィルタード・コレクション」をボトリングするなど、多彩なコレクションで識られる。

08 ダフタウン '87(イアン・マクロード)
 チーフテンズの一本。シェリー・フィニッシュの14年もの、43度。996本のリミテッド・エディション。
 軽くドライで食前酒向きだが、ベクトルが定めなく稀薄、総体として纏まりに欠ける。おなじ飲むなら、兄弟蒸留所のピティヴェアックのほうが美味。ベルの原酒モルト。
 蜂蜜、バター・キャラメル、クッキーのような柔らかく甘い香り。ただし口に含めば、さらさらと流れるが如き辛口。こくのなさが淋しく、些か物足りない思いに。フィニッシュは軽く短く、舌先に苦みが残る。
 スカイ島の豪族、マクロード家のイアン・マクロードがオーナー、エディンバラ近郊のブロックスバーンに本拠地を置く。同社はイングランドでの「グレンファークラス」の発売元。「タリスカー」をベースに用いたブレンデッド・ウィスキー「マリー・ボーン」「アイル・オブ・スカイ」や「クイーンズ・シール」で識られる。蒸留所名を記載できるボトルはイアン・マクロード社、蒸留所名を記載できないボトルはスコティッシュ・インデペンデント・ディスティラーズ社というように区分している。

09 バルヴィニー '89(DB)
 ポート・ウッド、40度のディスティラリー・ボトル。
 ポート・ウッドの21年もの43度のディスティラリー・ボトルとは異なり、初のヴィンテージ・ボトル。
 スペイサイドのみならず、スコットランドのすべてのモルトを代表する酒のひとつ。グレンフィディックとは兄弟蒸留所だが、フィディックが二級酒とするならば、バルヴィニーは大吟醸。加水にもバランスを崩さない腰の強さが身上。
 シナモン、ジンジャー、オレンジピール等、稠密な芳香と甘味、香りの迷宮に立ち至った感あり。タンニンが支える味わい。ずしりとくる重厚なフィニッシュ。
 ディスティラリー・ボトルには、ファウンダーズ・リザーヴ10年、ダブルウッド12年、シングルバレル15年、ポート・ウッド21年、他に数種のヴィンテージものシングル・カスクがあるが、すべて製法が異なる。職人の妙技と芸の細やかさに脱帽。かかるこだわりこそが、愛飲家の耳目を峙たせる。 麦はすべて自家栽培、現在なお、フロア・モルティングを行う数少ない蒸留所のひとつ。5世代にわたる家族経営にて、モルト担当が4人、マッシュ担当が3人、タンルーム3人、スティルマンが3人の計13人ですべてのモルト・ウィスキーを醸す。

10 ブレイヴァル '96(ダグラス・マクギボン)
 プロヴァナンスの一本。シェリー・バットの9年もの、46度。
 アルタナベーンとは兄弟蒸留所だが、こちらは重厚な味わい。メイプルシロップや干し葡萄の甘い香り、蜂蜜のような深くまろやかなこくとオレンジ・ピールの風味。フィニッシュは長くドライ。創業は73年と新しいが、ストラスアイラと共に傑出したモルト。ストラスアイラが甘すぎるという方に強くお薦め。
 蒸留所名はブレイヴァルだが、長くブレイヴァル・グレンリヴェットの名でボトリングされていた。シーバス・リーガルの原酒モルトのためディスティラリー・ボトルはなく、インデペンデント・ボトラーを介してやっと入手可能になった。しかし近年、入手がむずかしくなっている。
 ダグラス・マクギボン社は1949年、グラスゴーで組織された瓶詰業者。蒸留所の作業に携わった職人の末裔による同族会社にして、ダグラス・レイン社の系列。広大な熟成庫を持ち、60年代以降、色付けとチル・フィルターを拒み、「プロヴァナンス」の名のもとにコレクションを頒布。特にアイラ島の蒸留所とは太いパイプを持つ。2008年にラベルを一新。

11 マッカラン '96(ウイルソン・モーガン)
 バレル・セレクションの一本。マルサラ・フィニッシュの10年もの、46度。
 マルサラ・フィニッシュのマッカランは本品がはじめてでないだろうか。ラムやポート樽のダブル・マチュアードと比して、甘すぎず、適度の酸味が加味される。これはマルサラとマディラに限られる。すこぶる美味。
 ウイルソン&モーガン社は古くからエディンバラに拠点を置きさまざまな樽をリリースしてきたイタリア資本の会社。謂わば、イタリア系ボトラーズ・ブランドの「はしり」ともいえる老舗で、ムーン・インポートやサマローリよりも幅広い支持を受けている。バレル・セレクションの名でコレクションを頒し、イタリア国内の三ツ星レストランやバーなどではよく知られた瓶詰業者である。

12 モートラック '90(ヴィンテージ・モルト)
 ヴィンテージ・モルト社のクーパーズ・チョイスの一本。シェリー・カスクの8年もの、59.1度のカスク・ストレングス。
 濃厚なピート香と僅かに青林檎のキャラクター、柔らかいタンニンを持つミディアム・ボディ。シェリー樽由来のナッツ香とソフトなバニラの味わい、甘さとピート香のバランスに優れる。フィニッシュは長く、U.D社の16年ものと比べ、より爽やかにしてエレガント。
 ヴィンテージ・モルト社は1992年、ブライアン・クルックによってグラスゴーのバーズデンで創業。ヴァテッド・モルトの「フィンラガン」をボトリング。シングル・モルトでは「クーパーズ・チョイス」の名でコレクションを頒している。クーパーズとは樽職人の意。2001年5月にラベルが一新された。


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2010年01月21日 22:17に投稿された記事のページです。

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