輸血が落ち着いてから異変が起きている。三、四日前からなのだが朝立ちするようになった。ここ数年来なかったことで、いささか狼狽てている。某歌人は朝立ちを利用して御子息をもうけたらしいが、春風の再来になるやもしれず、もしもそうなればどうしようかと途惑っている。
思うに貧血とEDとは密接な関わりを持っているのでないだろうか。わたしは最近まで貧血とは縁がなかったので、性欲の貧しさは想像力の衰えと解釈していた。言い換えれば、妄想が生ままれなくなったと、さらに言い換えれば老いが理由だと思い込んでいたのである。ところが実体は海綿体にまで血液が回らなかったと、それだけのことでなかったか。
ここ数年来のEDは腎臓の病症の進捗と平行していたのではあるまいか。糖尿病患者は透析に這入る前にEDになると山崎医師から聞いた。わたしは糖尿でないが、クロアチニンが上がれば上がるほど同じことだとも聞いた。仮に輸血によって性欲が戻ったとしても、おそらくは一時のものだろう。ただ造血能力が少しでも残されているとすれば・・・そこまで考えなくても、輸血したときのみ性欲が復活するなら、こんなに愉しいことはあるまい。
それにしても、一体全体だれの血液がわたしのなかへ入れられたのか。飢えたヤング狼か。