安倍、城内、枝野、石破、平沢、小泉等々、今回の選挙で万歳三唱をしなかった人たちがいる。理由は個々に違うだろうが、いささかの爽快感を味わった。
なにかに付け、万歳三唱をしたがるひとがいる。わたしが一番反吐が出るのは出版記念と結婚式のそれである。ホメロスのイーリアスに見られる共飲共食や三日厨をはじめとする、もてなしとしての紐帯を否定はしない。ただ、いやしくも文学などという個の意識とそこから生じる問題に一度でも頭を悩ませたのであれば、万歳三唱などという能転気な戯言にかかわっていただきたくないと願っている。
それが理由でわたしは出版記念会と結婚式には極力出掛けないように心掛けている。他人の結婚式にわたしが出席したのは一度しかない。二十五歳のときのはなしだが、訳知りの友人(その結婚の当事者)から万歳三唱はしないと事前に聞いたからである。爾来、仕事の都合でやむを得ず出席した出版記念会はあるが、件の儀式がはじまると逃げるように立ち去る。
わたしの残日からはそのような目出度い式典は都合よくなくなった。余生は心置きなく過ごしたい。