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モルト会解説   一考   

 

 ロングモーンの香り、味わい、フィニッシュについては蒸留所紹介の項に譲る。ここでは個々のロングモーンのボトラーを紹介したい。

01 ヴィンテージ・ハイランド(シグナトリー)
 7年もの、40度。中味はロングモーン。
 シグナトリー社は1988年、リースで創業。現在はエディンバラに事務所兼倉庫を持ち、ボトリングから保管に至るすべての業務をを行う。「ダンイーダン」「サイレント・スティルズ」等、他では飲めない稀少なシングル・カスクが多い。ヨーロッパ向け限定商品として「アン・チルフィルタード・コレクション」がある。ラベルにはカスク・ナンバーやボトル・ナンバー等、詳細が著されてい、樽がもたらす個々の性格の違いを楽しむことができる。ゴードン&マクファイル社、ケイデンヘッド社に次ぐ三番目のボトラー。
 同社のカスク・ストレングスにあって、ダンピー・ボトルのシリーズは逸品揃い、ぜひ味わって頂きたいモルト・ウィスキーである。上記シリーズに取って代わったカスク・ストレングス・コレクションは同社の総力を挙げての快挙。グレンキース蒸留所で実験的に造られたクレイグダフ等が入っている。

02 ロングモーン '96(キングスバリー)
 セレクションの一本。ホグスヘッドの10年もの、43度。1110本のリミテッド・エディション。
 同時頒布にカリラ、グレン・グラント、マッカランの三種あり。
 元イーグル・サムという会社名でキングスバリー・シリーズを発売している。社名もそれにならいキングスバリーと改称され、本拠地もキャンベルタウンからスコットランド東部アバディーンへ、そしてロンドンへ移された。現在ではワインと蒸留酒全般を扱う。
 ボトラーのケイデンヘッド社の子会社。着色、添加は一切行わず、濾過はペーパー・フィルターのみ使用。すべてがシングル・カスクであり、蒸留年月日、瓶詰年月日、樽の種類等、モルトの性格を識るに必要な項目はラベルに記載されている。なお、ラベルに著されたテイスティング・ノートは鑑定家ジム・マレーの手になるもの。
 2000年4月「ケルティック・コレクション」が新たに頒された。ケルト文字をあしらった美しいデザインのラベル、中味も秀逸なコレクションである。ついでハンドライティング・シリーズを頒布。その名のとおり、ラベルがハンドライティングで仕上げられている。オリジナルとケルティック・コレクションに次ぐシリーズ。

03 ロングモーン'90(ドナート)
 ダン・イーディアンの一本。シェリー・カスクの10年もの、46度、415本のリミテッド・エディション。
 イタリアはジェノヴァの酒商。「ダン・イーディアン」とのコレクションを頒す。ダン・イーディアンとはスコットランドの古都エディンバラのケルト語読み。オスロスク12年、同カスク・ストレングス、カリラ10年、ボウモア9年、マッカラン11年等が当初ボトリングされた。カスク・ストレングス以外はすべて46度のシングル・カスク。無着色、低温濾過は施されていない。適度に澱もあり、コンディションは良好、かつコスト・パフォーマンスに勝れる。他にカスク・ストレングスも頒布している。シグナトリー社の関係子会社だが、大いに期待できるボトラーである。

04 ロングモーン '90(ウィスキー・ガロア)
 バーボン・カスクの12年もの、46度。
 ウィスキー・ガロア社はダンカン・テイラー社の子会社。他にヴァッテッドモルトも販売。ダンカン・テイラー社のピアレス・シリーズ同様、ノン・チル・フィルター、ノン・カラーリングで、46度まで加水のうえボトリング。
 親会社のダンカン・テイラー社は1961年にアラン・ゴードン氏によって設立、ダフタウンから東へ20キロ、ハントリーの町にオフィスを構える。ブレンデッド・ウィスキーの「グレン・アルバ」「スコティッシュ・グローリー」「グレンダロッシュ」などの商品を持つウィスキー・メーカー。
 2002年5月、新たにザ・ピアレス・コレクションを頒布。21年以上熟成されたシングル・モルトとシングル・グレーンを専門に扱う。同コレクションは元々B・デヴェロップ社から頒されていたが、その商標をテイラー社が買い取ってラベルを新たにしたもの。デヴェロップ社のボトルはわが邦には未入荷。なお、ハート・ブラザーズ社の長期熟成のモルトはダンカン・テイラー社の提供になるものが多い。

05 ロングモーン12年(ゴードン&マクファイル)
 本品は40度。ディスティラリー・ボトルと比して度数は低いが、キリキリと咽を刺すようなフィニッシュはこちらの方が強烈。
 ゴードン&マクファイル社は1895年、当初食料品店としてエルギンで創業。ウィスキー産業がまだブレンデッド中心の頃から同社は世界に向けてボトルを輸出、モルト愛好家を魅了してやまなかった。謂わば独立瓶詰業者のさきがけであり、今日のモルト・ウィスキー人気の蔭の立て役者。1992年、ベンローマック蒸留所をユナイテッド・ディスティラーズ社より買収。豊富な在庫を用い、「コニッサーズ・チョイス」「マクファイルズ・コレクション」「マクファイル・プライベート・コレクション」「スピリッツ・オブ・スコットランド」「スペイモルト」「レア・オールド」等、多くのコレクションを頒している。1995年にボトリングされた「100周年記念ボトル」は総じて樽の選択がよく、美味なものが多いのでお薦め。また、「コニッサーズ・チョイス」は各地の蒸留所のモルト・ウィスキーを網羅、ユナイテッド・ディスティラーズ社の「クラシック・モルト・シリーズ」と共に入門編として最適。

06 ロングモーン15年(DB)※
 45度の
 シーバス・ブラザーズ社がボトリングしていた旧ディスティラリー・エディション。04年位までは酒屋の棚の隅に在庫していたが、最近ではまったく見掛けなくなった。

07 ロングモーン16年(DB)※
 アメリカン・オークの48度。新しいディスティラリー・ボトル。
 蒸留所のオーナーはシーバス・ブラザーズ社からペルノ・リカール社へ変わった。今後の動向が気になる蒸留所である。本品の発売は07年から。ゴードン&マクファイル社のカスク・ストレングスやスピリッツ ・オブ・ スコットランドのボトル、またはダンカン・テイラー社のピアレス・コレクション等、ロングモーンはボトラーズ・ボトルが旨い。トップから南国フルーツの香りが顕著、オレンジマーマレード、マンゴー、グレープフルーツの皮のフィニッシュがディスティラリー・ボトルと比してより強い。値が高いばかりで、ディスティラリー・ボトルはいまいち。

08 ロングモーン'76(モンゴメリーズ)
 シングル・カスク・コレクションの一本。02年のボトリング。オーク・カスクの26年もの、43度。
 モンゴメリーズ社はアンガス・ダンディー社傘下のカンパニー、本社はグラスゴー。従って、マキロップ社とは兄弟会社になる。ボトリング・ライセンスを持ち、樽と樽とのヴァッティングは一切行わず、スモール・バッチを売りとする。第一回頒布は2000年末。
 親会社のアンガス・ダンディー社はモルトウィスキーの他ブレンデッドやスピリッツ全般を扱い、50年以上の歴史を持つロンドンの酒類販売業。スペイサイドのトミントール蒸留所、ハイランドのグレンカダム蒸留所のオーナー。モンゴメリーズ社やマキロップ社のボトリングはトミントール蒸留所の設備を用いている。樽の選択はマスター・オブワインの資格者ローン・マキロップ。
 モンゴメリーズ社、マキロップ社、ウィスキー・エクスチェンジ社は中味と比して安価なボトルが多い。

09 ロングモーン・グレンリヴェット '70(ベリー・ブロス&ラッド)
 ベリーズ・オウン・セレクションの一本。オロロソ・シェリー・カスクの28年もの、43度。
 1698年創業のベリー・ブロス&ラッド社は、カティーサークやブルーハンガーのプロデューサーとしても有名なロンドンの老舗酒商で、18世紀から現在までロイヤルファミリーにワインを供給している名門。マスターオブワインの資格者を常時雇用し、秀逸なワインやモルト・ウィスキーをベリーズ・オウン・セレクションとして販売。
 ロンドンのセントジェームスストリートにある本店は18世紀に建てられた古い建物で、香港のコーズウェイベイのリー・ガーデン(Lee Gardens)内に支店がある。セントジェームズストリートはホワイト・ブルックス、ブードルズといった古くからのジェントルマンズクラブが点在し、ジェントルマンの聖地(クラブランド)でとなっている。またセントジェームズパレスにも近く、同時にロンドンのクラフトマンシップの中心地でもある。通りの南側には8軒の老舗が集まっている。靴のジョン・ロブ、帽子のジェームズ・ロック、薬局のD・R・ハリス、銃砲のウイリアム・エバンス、世界最古の葉巻商ジェームズ・J・フォックスとロバート・ルイス、そしてワイン商のベリー・ブロス&ラッドとジャステリーニ&ブルックスである。

10 ロングモーン'91(ジャック・ウィバース)
 スコティッシュ・キャッスルの一本。06年のボトリング。オーク・カスクの15年もの、56.0度のカスクストレングス、260本のシングル・カスク。
 ジャック・ウィバース・ウィスキーワールド社は、その名の通りジャック・ウィバースが主宰するドイツのボトラー。「ウィスキー・ワールド」「オールド・トレイン」「ザ・クロスヒル」ドイツ限定ボトリングの「プレミアモルト」「スコティッシュ・キャッスル・コレクション」等がある。わが国ではエイコーンが扱っている。

11 ロングモーン'86(ウィスキー・エクスチェンジ)
 リージョンズ・ウイスキーの一本。07年のボトリング。バーボン・カスクの20年もの、54.3度のカスクストレングス、260本のシングル・カスク。
 バタースコッチ、キャラメルの香り。蜂蜜やスパイシーさが長く続き、心地よく甘い味わい。シンプルなラベルデザインながらも、スペイサイドは青、アイランドは茶色といったように各地域で色合いが異なる。当シリーズは他にリンリスゴー、マッカラン、オルトモーア、ハイランドパーク、ローズバンク等が頒されている。
 ロングモーンの長期熟成にはシェリー樽が多く用いられる。本品はバーボン樽だが、味わいは実に美味。
 ザ・ウイスキー・エクスチェンジ社は、ロンドン北部、パークロイヤルにある酒屋で、1200種を超えるシングルモルトの在庫を抱える。多くのディスティラリー商品の販売を手掛けることによって代表のスキンダー・シンは蒸留所関係者とも密接な関係を持つ。ブランド名となっている「ザ・シングルモルツ・オブ・スコットランド」シリーズは、同社を代表する製品。

12 ロングモーン '73(ゴードン&マクファイル)
 30年もの、55.8度のカスク・ストレングス。
 バニラやレーズン、ラム酒を想わせる華やかな香り。ドライでスパイシー、かつ拡がりのある味わい。喉ごしは滑らかだが、舌先にごく僅かな渋味が残る。蓋し、秀でた食前酒であり、エルギン地区を代表する佳酒。
 他では64年、66年、69年蒸留のものが多く頒され、特に66年の41年ものがケルティック・ラベル、69年の39年ものがスピリッツ・オブ・スコットランドとして08年にボトリングされている。


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2008年12月22日 00:25に投稿された記事のページです。

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