「サッポロはいっそギネスの子会社としての生き残りを考えればどうか。それでなくとも、外資の禿鷹ファンドに狙われている。三菱グループの麒麟麦酒や三井系の大日本麦酒同様、ディアジオ社傘下のビールメーカーがあってもよい。ディアジオ社と関係が深いのはキリンビールだが、なぜか日本国内でのギネスビールの販売権はサッポロビールが持っている。それを利用しない手はないと思うのだが」と書いたのが8月4日。
「おそらく近い将来、サッポロもギネスから袖にされるに違いない、と思っているのは私だけなのであろうか。そのようにならないことを願っている」と書いたのが9月4日。
そして11月26日のロイターは「キリンビール、ギネスなどの国内販売権を取得」と伝えた。全文は以下のごとし、
「キリンビールは26日、英酒類大手ディアジオが持つ「ギネス」などの国内販売権を取得、2009年6月1日から輸入・販売を開始すると発表した。
ディアジオ社は、1964年からサッポロビールと販売代理店契約を結んでいたが、09年5月末での契約打ち切りを通告。国内販売代理店をサッポロからキリンに切り替えた。
キリンが販売するのは「ギネス」、「キルケニー」、「スミノフアイス(アルコール飲料)」。
「ギネス」は、2006年に55万ケース(1ケースは大瓶20本換算)を売り上げてピークを付けた後、07年は53万ケース、08年も同程度の販売を見込んでいる。
サッポロによると、ディアジオ分の07年の売上げ分は70億円で、サッポロの国内酒類売上高の2.2%となっている」
キリンは93年にサントリーから、アンハイザー・ブッシュの「バドワイザー」の販売権を取得、現在はライセンス生産を行っている。そして今回、キリンが狙っていたのはディアジオ社の契約打ち切り、これでキルケニーが不安定な販売から解放される。失礼なはなしだが、上面醗酵と下面醗酵を繰り返しているキリンの黒ビールはひどく不味い。ギネスを取り込むことで、スタウト本来の上面醗酵の旨いビールを手中にした。
セブンイレブンの一部店舗限定のチルドビールがはじまったのが2002年7月。無濾過ビールを販売するにコンビニの配送ルートを利用しない手はない。このコンビニの配送ルートに関して私は99年に講演で述べた。キリンは大手メーカーなのだが、もっとも小回りがきくメーカーである。キルケニーのさらなる発展を祈る。