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モルト会解説   一考   

 

01 クライヌリッシュ14年※
 46度のディスティラリー・ボトル。
 2002年夏の発売だが、正規代理店を経ての入荷は同年10月より。
 U.D社の花と動物シリーズと比して、初手はよりホットにしてスパイシーな味わい。暖かく長く続くフィニッシュの中に僅かな甘味があり、バランスの良さでは本品が優るものの、旧ディスティラリー・ボトルにみられるバターのようなこくと香りはなくなった。香味にかなり差異があり、好き嫌いが訣れるところか。

02 クライヌリッシュ '89(マクギボン)
 プロヴァナンスの一本。11年もの、43度。
 足腰が強く、スパイシー、かつ長く豊かなフィニッシュをもたらすモルトは、熟成の年月にこだわらず、若いものを味わうのが最適。
 ダグラス・マクギボン社は1949年、グラスゴーで組織された瓶詰業者。蒸留所の作業に携わった職人の末裔による同族会社にして、ダグラス・レイン社と同系列。広大な熟成庫を持ち、60年代以降、色付けとチル・フィルターを拒み、「プロヴァナンス」の名のもとにコレクションを頒布。特にアイラ島の蒸留所とは太いパイプを持つ。かつての「クライズデール」同様、熟成年数の若いモルトが中心だが、共に品質のよさでは一頭地を出す。「マクギボン・プレミアム・リザーヴ」とのブレンデッド・スコッチも頒している。割水を施した低アルコールのモルト・ウィスキーをマクギボン社より、プリファード・ストレングスもしくはカスク・ストレングスをダグラス・レイン社と割り振りしている。
 ラベルの左部分には彼らのシングルモルトウイスキーへのこだわり、そして右部分にはテースティングノートが。そしてもっとも特筆すべきは春夏秋冬と蒸留したシーズンによって異なるラベルカラーと風景画を配している。

03 クライヌリッシュ '90(ヴィンテージ・モルト)
 クーパーズ・チョイスの一本。ポート・フィニッシュの12年もの、46度。
 ヴィンテージ・モルト社は1992年、ブライアン・クルックによってグラスゴーのバーズデンで創業。ヴァテッド・モルトの「フィンラガン」をボトリング。シングル・モルトでは「クーパーズ・チョイス」の名でコレクションを頒している。クーパーズとは樽職人の意。2001年5月にラベルが一新された。

04 クライヌリッシュ '82(ロンバード)
 ジュエル・オブ・ハイランドの一本。16年もの、50度のカスク・ストレングス。
 ロンバード社のボトルは総じて塩辛い。スプリングバンクも辛いが、本品もクライヌリッシュとしては図抜けて辛口に振られている。
 ロンバード社はスコットランドのマン島のインディペンデントボトラー。「ジュエルズ・オブ・アイラ」「ジュエルズ・オブ・キャンベルタウン」等々、地域ごとにラベル・デザインが異なるジュエルズ・コレクションを頒布している。ジュエルは至宝、珠玉、貴重の意。
 家族経営の会社で、さかのぼること300年以上も前から酒類業界に身を置く。ビールの醸造所を所有していた1960年頃に、副産物としてのウイスキーを生産したのが、ロンバード・ウイスキーの始まり。当初はウイスキーの樽をブレンデッド・ウイスキーのメーカーに売るブローカーだったが、1990年代にシングルモルトが注目されるようになると、いち早くインディペンデントボトラーに変身。カスクストレングスよりは、46度や50度のモルトを中心にリリースしている。2001年からニューシリーズが頒され、ロングボトルになってラベルも新しくなった。

05 クライヌリッシュ '89(アデルフィ)
 12年もの、57.2度のカスク・ストレングスにしてシングル・カスク。
 アデルフィ蒸留所は1826年グラスゴーにて設立。1880年にはスコットランドでもっとも大きな蒸留所のひとつになる。しかし、20世紀に入り景気が後退、生産調整のために多くの蒸留所が閉鎖。アデルフィ蒸留所も時局を免れること能わず、1902年に閉鎖。ボトリングラインと倉庫のみ使用されるという状態で1960年まで建物は残っていたが、その後取り壊されました。
 蒸留所の最後のオーナーであったアーチボールド・ウォーカー氏より数えて四代目にあたるジミー・ウォーカー氏はアデルフィ蒸留所の再興を願い、1993年にエディンバラでインデペンデント・ボトラーを設立。2004年にオーナーが変わり、テイスティングメンバーにはチャールズ・マクリーンが参加している。
 アデルフィ社は低温濾過すなわちフィルターの無使用と無着色のカスク・ストレングスを専門する。ラベルとボトルのデザインはスコットランドのグラハム・スコットの手になるもの。すべてが一樽のみのシングル・カスクのため、イギリスでは主にメール・オーダーで頒布されている。信頼できる瓶詰業者のひとつですが、わが邦での評価は異常なまでに高い。もっとも美味なクライヌリッシュのひとつである。 

06 クライヌリッシュ '90(キングスバリー)
 バルデスピノ社のコリセオ・アモンティリャード・シェリー・カスクを用いた10年もの、54.2度のカスク・ストレングス。
 バルデスピノ社は1340年創業のシェリー酒専門メーカー。アモンティリャード・コリセオは140年を超える古酒でありながら、若々しい香味を失わない銘酒。その樽を用いたというだけで、酒通にはこたえられない。2000年4月リリースの本シリーズには、他にスプリングバンク91年とリンクウッド90年の二種がある。
 キングスバリー社はスコットランド東部アバディーンのワイン商。現在ではロンドンに本社を持ち、ワインと蒸留酒全般を扱う。ボトラーのケイデンヘッド社とその子会社イーグル・サム社と太いパイプを持つ。着色、添加は一切行わず、濾過はペーパー・フィルターのみ使用。すべてがシングル・カスクであり、蒸留年月日、瓶詰年月日、樽の種類等、モルトの性格を識るに必要な項目はラベルに記載されている。なお、ラベルに著されたテイスティング・ノートは鑑定家ジム・マレーの手になるもの。
 2000年4月「ケルティック・コレクション」が新たに頒された。ケルト文字をあしらった美しいデザインのラベル、中味も秀逸なコレクションである。

07 クライヌリッシュ '83(シグナトリー)
 オーク樽による15年もの、43度のフルボディ。限定715本のシングル・カスク。
 1988年、リースで創業。現在はエディンバラに事務所兼倉庫を持ち、ボトリングから保管に至るすべての業務をを行う。「ダンイーダン」「サイレント・スティルズ」等、他では飲めない稀少なシングル・カスクが多い。ゴードン&マクファイル社、ケイデンヘッド社に次ぐ三番目のボトラー。
 アデルフィ社のボトルと共に傑出したクライヌリッシュ。

08 クライヌリッシュ '91(ユナイテッド・ディスティラーズ)※
 ザ・ディスティラーズ・エディションの一本。ダーク・オロロソ・セコシェリー・フィニッシュの15年もの、46度。
 販売は07年から。まず香るのはレーズン、さらに言えばラムレーズン。オレンジピール、胡桃、ドライチェリー、干し葡萄、アプリコット等の香りと共に、ブラック・チョコレートといったやや刺激性の香りも。ヘーゼルナッツやマカダミアナッツが内包する粘りのある舌触り、油性の質感のなかにソルティーな味わい。ダブル・マチュアードによって、軽くフローラルなスタイルに木ノ実の豊かさがうまく加味される。フィニッシュは短いが、ナッティーなほろ苦さが強調されている。

09 ブローラ '82(イアン・マクロード)
 チーフテンズの一本。シェリー・バットの19年もの、46度。2樽、1332本のリミテッド・エディション。
 スカイ島の豪族、マクロード家のイアン・マクロードがオーナー、エディンバラ近郊のブロックスバーンに本拠地を置く。同社はイングランドでの「グレンファークラス」の発売元。「タリスカー」をベースに用いたブレンデッド・ウィスキー「マリー・ボーン」「アイル・オブ・スカイ」や「クイーンズ・シール」で識られる。蒸留所名を記載できるボトルはイアン・マクロード社、蒸留所名を記載できないボトルはスコティッシュ・インデペンデント・ディスティラーズ社というように区分している。
 1999年に頒された「チーフテンズ・チョイス」は2001年に「チーフテンズ」と変更。ラベル、パッケージ共に一新、フルラインナップとなった、初入荷は十四点。ダグラス・レイン社の「オールド・モルト・カスク」と共に今後目の離せないシリーズとなった。他に「ダン・ベーガン」「アズ・ウィ・ゲット・イット」「シールダイグ」「ファラン・イーラ」等、多彩なボトル展開をしている。

10 ブローラ '75(ダグラス・マクギボン)
 プロヴァナンスの一本。25年もの、43度、限定263本のシングル・カスク。01年のボトリング。
 アイラのポート・エレン、ローランドのセント・マグデラン同様、ストックが尽きた段階で飲めなくなるモルト。煤の臭い、焦げたオークのスモーキーなキャラクター、噛み応えのあるタンニン。強烈な個性を味わえるのは今を除いてない。

11 ブローラ '81(ダグラス・レイン)
 オールド・モルト・カスクの一本。18年もの、50度のプリファード・ストレングス、限定263本のシングル・カスク。
 蒸留所最終年のボトルに五万円もの値がつけられている。それが妥当かどうかはさて置いて、25年ものがもっとも若くなってしまったいま、18年は貴重である。
 ダグラス・レイン社は1949年、グラスゴーにて設立。「キング・オブ・スコッツ」等、ブレンデッド・スコッチを扱うブレンダー兼ブローカー兼ボトラー。1999年より「オールド・モルト・カスク」と題するシングル・モルトのコレクションを頒布。アルコール度数を50度に限るのが同社のポリシーだが、熟成期間が長く、アルコール度数が50度未満のものはカスク・ストレングスとして頒される。
 50度を越える高アルコールのボトルは望むべくもないが、稀少品が多く、比較的コンディションもよい。入手しにくい蒸留所の長期熟成品のボトリングがこのところ続いている。現在、最も活躍しているボトラーである。
 ダグラス・レイン社は父方の、ダグラス・マクギボン社は母方の一族が営み、ミルロイ兄弟とは懇意にしている。

12 ブローラ '77(レア・モルト)※
 ユナイテッド・ディスティラーズ社のレア・モルト・セレクションの一本。21年もの、56.9度のカスク・ストレングス。
 ナッツのオイリーな風味と熟した果実の甘さ。噛みごたえのあるタンニンを伴うスパイシーなフィニッシュ。クライヌリッシュと比してドライ、また極めてスモーキー。
 ギネス・グループの一員にして、半数近い蒸留所(閉鎖もしくは休業中の蒸留所を含め、現時点で36箇所)を所有するスコッチ業界最大のウィスキー・メーカー。ダグラス・レイン社をはじめ、多くのボトラーへ樽を供給していたが、昨今樽売りを極力控えている。モルト・ウィスキーのブームに鑑みて、傘下の蒸留所のオフィシャル・ボトルの販売を促すためと思われる。
 「レア・モルト・セレクション」は「花と動物シリーズ」の好評に気をよくしたU.D社がすでに閉鎖された蒸留所や稀少なモルト・ウィスキーを樽出しにて94年よりボトリング。より高価、よりレアなコレクションとして愛飲家に大いなる刺激と満足感を与えた。
 「インチガワー」「オルトモーア」「カードゥ」「カリラ」「クライヌリッシュ」「クレイゲラヒ」「グレン・オード」「グレンダラン」「グレンユーリー・ロイヤル」「グレンロッキー」「コールバーン」「セント・マグデラン」「ダフタウン」「ダラス・ドゥー」「ダルユーイン」「テナニャック」「ノース・ポート」「バルミニック」「ヒルサイド」「ブローラ」「ベンリネス」「ベンローマック」「ポート・エレン」「マノックモア」「ミルバーン」「モートラック」「リンクウッド」「ローズバンク」「ロイヤル・ブラックラ」「ロイヤル・ロッホナガー」の30種が頒布されている。2001年のリリースに「ブラッドノック」がある。


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2008年11月21日 00:02に投稿された記事のページです。

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