レイアウトが崩れる方・右メニューが表示されない方: >>シンプル・レイアウトへ

« ですぺらモルト会 | メイン | 歪み »

若いアードベッグを飲んで   一考   

 

 アードベッグ蒸留所の創業者はアレグザンダー・スチュアート。創設は1794年だが、その年のうちに敢えなく倒産。1815年にマクドゥガル社が再興、同社は1959年に経営が行き詰まった。以降はアードベッグ・ディスティラリーズ社のもとで生産が続けられたが、1973年にカナダのハイラム・ウォーカー社の傘下に入った。1981年から操業は停止されていたが89年に再開。1997年にグレン・モーレンジ社が買収、グレン・モーレンジ社は04年にルイヴィトン・モエヘネシーグループに買収された。
 フロア・モルティングが最後に行われたのは1976年から77年にかけてであり、80年代の閉鎖期間の後はポート・エレンが供給する麦芽を用いている。ヘビーにピートを焚き込んだ昔ながらの自家麦芽を用いたモルト・ウィスキーの蒸留は98年から。わが国では20008年7月25日に10年ものがお目見え。

 どこの蒸留所もそうなのだが、さまざまな香味のウィスキーを造り、それらを混ぜ合わせて蒸留所元詰めを発売する。従って、テイスティングもしくはブレンドをする人のセンスひとつで酒はいかようにも化ける。
 今回、アードベッグを十二種類飲んで、旨かった順に書けば、コニッサーズ・チョイス、マーレイ・マクデヴィッド、オールド・モルト・カスク、インプレッシヴ、リンブルグ、プロヴァナンスとなる。アルコール度数の違いは差っ引いている。要するにディスティラリー・ボトルは順位に入らない。敢えて申せば、加水タイプの10年ものなら入れてもよいというのが私の評価である。
 ウーガダールを飲んだときにバーベキューソースやスペアリブにつけるソースのような味が濃厚で嫌な予感がしたのだが、それが的中してしまった。前述のウィスキーと比して、なにかしらディスティラリー・ボトルには雑味が伴う。ピートのフェノール値を高めた結果だとしたら、いささか切なくなる。しかし、フェノール値の問題ではあるまい。パシフィック・カレドニアン社のアイル・オブ・ジュラ、グレン・スコシア・ピーテッド、キャパドニック・ピーティー・バレル、シグナトリー社のベンリアック・ヘヴィリー・ピーテッド、ゴードン&マクファイル社のベンローマック・ピート・スモーク等を私たちは知っている。
 上記のうち、ゴードン&マクファイル社からダンカン・テイラー社までの四種類にはやわらかさの中に、ほんのりとした煙香が漂っている。ピート香よりもさらにソルティーな味わいが強調されている。これはポート・エレンにも共通した香味で、ソルティーなポート・エレンといえばゴードン&マクファイル社のカスク・ストレングスにとどめを指す。「接着剤と含嗽(がんそう)剤を綯い交ぜたエキセントリックな臭い。塩辛く鋭角なこく。舌を刺す刺激と極めてスパイシーなフィニッシュ」といった表現はレアモルトやポート・エレン・モルティング社名義のボトルからは窺われない。ユナイテッド・ディスティラーズ社のポート・エレンはカスク由来のシェリー香が強く、旨すぎて本来のポート・エレンとは懸け離れている。
 ブレッヒンほどではないにせよ、アードベッグのディスティラリー・ボトルにはココアパウダーもしくは胡瓜のへたのような苦みが感じられる。それは10年ものを除いて、アリー・ナム・ビーストからルネッサンスに至る全商品に共通している。それが蒸留所としての姿勢なら仕方がない。ゴードン&マクファイル社はアードベッグ蒸留所との契約更新がかなわなかったと聞く。されば、ダグラス・レイン社やダンカン・テイラー社のシングル・カスクを飲むしかあるまい。それにしても、リンブルグのボトルはディスティラリー・コンディションである。蒸留所のブレンダーの手が入らなければ、かくまで旨いアードベッグがボトリングされる。管理体制の刷新を強く望む。


←次の記事
「歪み」 
前の記事→
 「ですぺらモルト会」

ですぺら掲示板2.0トップページへ戻る

このページについて...

2008年07月28日 16:17に投稿された記事のページです。

次の記事←
歪み

前の記事→
ですぺらモルト会

他にも
  • メインページ
  • アーカイブページ

  • も見てください。

    アーカイブ

    ケータイで見るなら...


    Google
    別ウィンドウ(orタブ)開きます。

    牛込櫻会館(掲示板1.0他)内
    ですぺらHP(掲示板2.0他)内
    Powered by
    Movable Type 3.34