数箇月後のはなしになるが、湯川成一さんの出版人としての仕事について書くことになった。書くとは云っても覚束ない。私ごときになにが出来ようか。ただ、生き残りは私だけになってしまった。湯川さんへの感謝の意と出版に対する意見の最後の表明になる。
[追記]
湯川さんの内密にとの意志によってすべては伏せられてきた。従って、どこまで書けばよろしいのか私には分からない。しかし、彼の最後の闘いについてはいずれ書かなければならない。
昨年十月、身体が異常にだるいとのことで、京都大学医学部附属病院で診察。その時、既に末期癌だった。十二月、胆嚢からの摘出手術をするも肝臓に転移、二月にはリンパ節へと転移、そのまま帰らぬ人となってしまった。
三条の事務所は上原さんが閉鎖、九月刊行の書物があってそれは奥様の手によって予定通り最後の湯川本として上梓される。
たった一人の敬愛する友を、編輯者を、出版人を喪った。世の中はサラリーマン編輯者ばかりになった。自らの命を、生活を守ろうとするような者を編輯者とは言わない。湯川成一が自らの身も心もずたずたにしてまで成し遂げようとしたもの、その夢の一端を書き記したいと思う。