宛先のない小包に宛先を書き加えるに十年は掛かる。赤坂の料理屋で三年、京都の割烹で五年、仕上げに自らの創意工夫が任意の店で二年、合わせて十年になる。
仕出しにとってもっとも大事なのは炊き合わせ、こいつが一番時間が掛かる。そうでなければ、赤坂の三年と京都の五年が逆転する。それでなくとも、既に五年が喪われている。料理人は舌が定まる前にはじめなければならない。それが理由の十五歳である。二十歳にもなった人を京都の割烹は雇わない。なにかしらの方策が必要である。後れ馳せながら、今日から不良さんの時間との格闘がはじまる。頑張ってほしい。