このところモルト・ウィスキーの客で忙しい。雑誌のお陰もあり、他方ウェブサイトを覧てという客も多い。despera.comのカウントは増え続けている。ウェブサーバの統計によると一日五千件をコンスタントに超えた。ありがたいはなしである。
客が増えればモルト・ウィスキーは減る。拙宅からのボトルの大量投与で急場を凌いでいるが、このまま行けば、あと一年ほどで在庫は尽きる。旧店舗で仕入れた収集品というか、ボトルが六百本はあった。それが目に見えて減ってきたのである。開店以来、この七箇月で既に二百本は注ぎこんだように記憶する。この二百本にはディスティラリー・ボトルの追加購入は入れていない。フードがなくなった分、なおさらモルト・ウィスキーの消耗が激しいのであろう。
高遠弘美さんの「消え去ったアルベルチーヌ」を検索して訪ねる方が多い。私はといえば、四月十四日に同書の近刊予告を書いたのみ、実は送られてきた同書を日曜日にゆっくりと読ませていただくつもりにしていた。ところが前項の理由によって読書は不可能になった。急ぐ必要はあるまい、遅らせる方が愉しみが増そうというものである。
同じ高遠さんの書き込みに影響を受けて著した「針聞書」のキャッシュを作りにロボットが日参している。そして同じキャッシュにバーン・スチュワートが挙がっていたが、こちらは生産量世界第三位のメーカーにしてブローカー、そして蒸留所のオーナーでもある。いづれ別項を設ける。
鶴留さんへ一言。拙宅の書庫から吉行淳之介はなくなっていた。驟雨、原色の街はおろか、湯川書房で造った限定版、ご当人から寄贈された著書もである。残日は少ない、読み切れない書物は躊躇なく売りさばいている。散書の悲しみは集書の段階ではじまっている。あと十年余のあいだに蔵書はことごとく処分したく思っている。書物同様、人の存在も新陳代謝である。