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モルト会解説   一考   

 

ですぺらモルト会(ブレイヴァルとクラガンモアを飲む)

 クラガンモア '90(マーレイ・マクデヴィッド)
 バーボン・カスクの11年もの、46度のシングル・カスク。
 マーレイ・マクデヴィッド社はグラスゴーとロンドンに店を持つ瓶詰業者。オーナーのゴードン・ライトのファミリーは1828年以来、スプリングバンク蒸留所を経営。「スプリングバンク」のディスティラリー・ボトル同様、すべての商品は46度に調整されている。2001年初頭、アイラ島のブルイックラディ蒸留所をジム・ビーム・ブランド社より買収。また、マッキンタイアという瓶詰業者のボトルが時折日本でも出まわるが、これはマーレイ・マクデヴィット社がドイツの輸入会社のために瓶詰、すべてがカスク・ストレングスである。
 同社のボトルの裏ラベルには必ず繰り言が著されている。例えば「アードベッグ」のラベルでは、蒸留所をわが社に売らず、何故グレンモーレンジ社に売却したのかといった類である。「ラフロイグ」も然り、ディスティラリー・コンディション以外のボトルが頒布されるのを嫌がった同社との間に訴訟騒ぎを起こしている。結果、わざとラフロイグのスペルを誤植させ、お茶を濁す始末。かかる生臭さに私などは惹かれるのである。最近、「ミッション」と題して長期熟成のコレクションを頒布している。

 クラガンモア '89(ヴァン・ウィー)
 アルティメットの一本。オーク・カスクの12年もの、43度のシングル・カスク。
 ヴァン・ウィー社は1921年に煙草の卸業者としてオランダのアムステルダム郊外に設立。マッカランやグレンファークラス等の蒸留所元詰めや、ゴードン&マクファイル社やケイデンヘッド社のボトラーズ・モルトをオランダで最初に輸入。1994年からアルティメットの名でコレクションを頒す。シングル・カスク、ノンチル・フィルター、ナチュラル・カラーを順守し、モルト愛好家の期待に応えている。
 わが国へは2000年1月入荷のスプリングバンクが最初。同年6月以降は順次輸入されている。
 同社のホームページはこの種のものとしては傑出している。情報量の多さもさることながら、マイケル・ジャクソンに倣い、すべてのボトルに点数を設けています。蒸留所の写真も豊富に掲載されてい、モルト・ファンなら覗かずにはいられないホームページ。
 (http://www.awa.dk/whisky/windex.htm)

 クラガンモア '89(キングスバリー)
 3年ぶりのオリジナル・ボトル。ホグスヘッドの11年もの、46度。396本のシングル・カスク。
 元イーグル・サムという会社名でキングスバリー・シリーズを発売している。社名もそれにならいキングスバリーと改称され、本拠地もキャンベルタウンからアバディーン、そしてロンドンへ移された。現在ではワインと蒸留酒全般を扱う。
 ボトラーのケイデンヘッド社の子会社。着色、添加は一切行わず、濾過はペーパー・フィルターのみ使用。すべてがシングル・カスクであり、蒸留年月日、瓶詰年月日、樽の種類等、モルトの性格を識るに必要な項目はラベルに記載されている。なお、ラベルに著されたテイスティング・ノートは鑑定家ジム・マレーの手になるもの。
 2000年4月「ケルティック・コレクション」が新たに頒された。ケルト文字をあしらった美しいデザインのラベル、中味も秀逸なコレクションである。ついでハンドライティング・シリーズを頒布。その名のとおり、ラベルがハンドライティングで仕上げられている。オリジナルとケルティック・コレクションに次ぐシリーズ。

 クラガンモア '89(ケイデンヘッド)
 オーセンティック・コレクションの一本。オーク・バットの12年もの、59.2度のカスク・ストレングス。678本のリミテッド・エディション。
 ケイデンヘッド社は1842年、エディンバラにて創業。現在はキャンベルタウンを本拠地とし、エディンバラのキャノンゲートとロンドンのコヴェント・ガーデンに店舗を持つ。スコットランド最古のインデペンデント・ボトラーにして、ゴードン&マクファイル社と共に業界の雄。オーナーはJ&Aミッチェル社でスプリングバンク蒸留所とは同資本。「オーセンティック・コレクション」「オリジナル・コレクション」「ボンド・リザーヴ」「チェアマンズ・ストック」等のコレクションがある。着色と低温濾過を施さず、樽と樽とのヴァッティングも一切行わない。一樽限定のシングル・カスクという贅沢な飲み方を世界に広めた第一人者。子会社にダッシーズ社とイーグル・サム社(現キングスバリー社)があり、サマローリ社やスコッチ・モルト・ウィスキー・ソサエティー社等、多くのボトラーに樽を供給している。ユナイテッド・ディスティラーズ社のボトルに満足せず、さらなる刺激をお求めの方にお薦め。

 クラガンモア・カスクストレングス '93(DB)※
 ボデガ・ユーロピアン・オークの10年もの、60.1度のカスク・ストレングスにしてディスティラリー・ボトル。15000本のリミテッド・エディション。
 熟成年とアルコール度数を感じさせない柔らかさを持つ。コーヒーやビターチョコレート、グレインや皮、マディラ酒などの香り。加水すると、スモーキーさからウッディな芳香へ、さらにナッツ系の香りへと変化してゆく。ハーブやスパイス(月桂樹・胡椒の実・ナツメグ等)のキャラクターを内包。さまざまな暗示があり、名状し難い複雑な味わいを呈している。
 ディスティラリー・ボトルとしてディアジオ社のクラシック・モルト・シリーズに12年ものが入っている。飲み口の柔らかさと豊潤なこくと香り、そのバランスのよさと華やかなフレーバーはモーツァルトのシンフォニーに例えられる。評論家マイケル・ジャクソンの採点ではマッカランに次ぐ高得点。名実共に、スペイサイドを代表する銘酒。オールド・パーとアンティクァリーのメイン原酒。
 ディスティラリー・ボトルは先頃ラベルが変わったが、香味に変化はない。他にダブルマチュアードのポートとフレンド・オブ・クラシックの14年もの、さらに29年ものカスク・ストレングスが頒されている。

 クラガンモア・カスクストレングス '88(DB)※
 リフィール・アメリカンオーク・ホグスヘッドの17年もの、55.5度のディスティラリー・ボトル。5970本のリミテッド・エディション。
 10年ものより、色は淡く、香味は確実に複雑。スティルの独特な形状により、蒸気中の不純物がローワインに戻され再凝縮する「リフラックス」のよさを最大限に活かす。つねに芳香が変化する様はバルヴィニーのシングル・カスクと双璧。表現力豊かなクラガンモア。
 それにしても、10年ものをスパニッシュ・オークのシェリー樽、17年ものをアメリカン・オークで熟成するところは非凡。10年であればカスク由来の変化に富む香味の力を借り、17年であればこそカスクによる変化を拒む、ブレンダーの卓越した妙技に感服。

 クレディタブル '75(ダグラス・レイン)
 オールド・モルト・カスクの一本。25年もの、50度のプリファード・ストレングス。限定300本のシングル・カスク。中味はクラガンモア。
 蜂蜜と柑橘系のスイートな香り、香草を食むような膨(ふく)よかな味わい。水際立った切れ上がりのよさ、嫋々(じょうじょう)たる余韻。
 ダグラス・レイン社は1949年、グラスゴーにて設立。「キング・オブ・スコッツ」等、ブレンデッド・スコッチを扱うブレンダー兼輸出業者。1999年よりオールド・モルト・カスクと題するシングル・モルトのコレクションを頒布。現在はオールド&レア・プラチナ・セレクションにも力を入れる。ダグラス・レイン社は父方の、ダグラス・マクギボン社は母方の一族が営み、ミルロイ兄弟とは親しい。
 アルコール度数を50度に限るのが同社のポリシーだが、熟成期間が長く、アルコール度数が50度未満のものはカスク・ストレングスとして頒される。50度を越える高アルコールのボトルは望むべくもないが、稀少品が多く、比較的コンディションもよい。ポート・エレンをはじめ、入手しにくい蒸留所の長期熟成品のボトリングがこのところ続いている。現在、最も活躍しているボトラーである。

 ブレイヴァル '96(ダグラス・マクギボン)
 プロヴァナンスの一本。シェリー・バットの9年もの、46度。 
 プロヴァナンスとはグラスゴーのインデペンデント・ボトラー、ダグラス・マクギボン社のコレクションの総称。同社は1949年に創設。創業者のアゥルド・ダグラス・マックギボンは現在のオーナーの祖父。彼はアイラ島で水没した蒸留所、ロッホインダールとポートシャーロットのマッシュハウスの責任者で、スコッチウイスキーへの愛情とこだわりは、研修生としてブルイックラディ蒸留所で働いていた時代に育まれた。スコッチウイスキーの販売をはじめてから頑なにノーカラーリング・ノーチルフィルターリングを貫く。ラベルの左側には彼らのモルトウイスキーへのこだわりが、そして右側にはテイスティングノートが、そして特筆すべきは春夏秋冬と蒸留したシーズンによって異なるラベルカラーと風景画を用いている。

 ブレーズ・オブ・グレンリヴェット '85(シグナトリー)
 オーク・カスクの16年もの、43度。432本のリミテッド・エディション。
 ソフトな中甘口、噛み応えのあるボディ。
 シグナトリー社は1988年、リースで創業。現在はエディンバラに事務所兼倉庫を持ち、ボトリングから保管に至るすべての業務をを行う。「ダンイーダン」「サイレント・スティル」等、他では飲めない稀少なシングル・カスクが多い。ヨーロッパ向け限定商品として「アン・チルフィルタード・コレクション」や「ストレート・フロム・ザ・カスク」ドイツ向けに「ザ・シングル・シングル・モルト・コレクション」「ナチュラル・ハイ・ストレングス」日本向けに「ザ・フラゴン・コレクション」をボトリングするなど、多彩なコレクションで識られる。ラベルにはカスク・ナンバーやボトル・ナンバー等、詳細が著されてい、樽がもたらす個々の性格の違いが愉しめる。
 同社のカスク・ストレングスにあって、ダンピー・ボトルのシリーズは逸品揃い、ぜひ味わって頂きたいモルト・ウィスキーである。上記シリーズに取って代わったカスク・ストレングス・コレクションは同社の総力を挙げての快挙。グレンキース蒸留所で実験的に造られたクレイグダフ等が入っている。

 ブレイズ・オブ・グレンリヴェット '77(キングスバリー)
 オーク・ホグスヘッドの19年もの、48.9度のカスク・ストレングス。シングル・カスク。
 蒸留所名はブレイヴァル。シーバス・リーガルの原酒モルトのためディスティラリー・ボトルはなく、インデペンデント・ボトラーを介してやっと入手可能になった。しかし、1994年にグラスゴーにおいて設立された瓶詰業者アベルコ社がシーバス・ブラザーズ社の許可の下でディアストーカーを販売。10年、12年、18年の三アイテムがリリースされた。12年と18年はバルミニックだが、10年はブレイヴァル。準オフィシャル・ボトルといえる。
 同10年ものは熟したグスベリーと西瓜のふくよかな香り。ライトボディにしては華麗で長いフィニッシュ、歯ごたえさえ感じさせる。ちなみに、マイケル・ジャクソンやジム・マーレイなどウイスキーの専門家も高く評価している。
 なお、二回目のリリースでは12年ものの中身がアルタナベーンになっている。ラベルに蒸留所名が記載されているので、購入時には確認が必要。

 ブレイズ・オブ・グレンリヴェット '89(ダンカン・テイラー)
 ピアレス・シリーズの一本。オーク・カスクの18年もの、50.2度のカスク・ストレングス。347本のリミテッド・エディション。
 ダンカン・テイラー社は1961年にアラン・ゴードン氏によって設立、ダフタウンから東へ20キロ、ハントリーの町にオフィスを構える。ブレンデッド・ウィスキーの「グレン・アルバ」「スコティッシュ・グローリー」「グレンダロッシュ」やシングル・モルトの「ウィスキー・ガロア」などの商品を持つウィスキー・メーカー。
 2002年5月、新たにザ・ピアレス・コレクションを頒布。21年以上熟成されたシングル・モルトとシングル・グレーンを専門に扱う。同コレクションは元々B・デヴェロップ社から頒されていたが、その商標をテイラー社が買い取ってラベルを新たにしたもの。デヴェロップ社のボトルはわが邦には未入荷。なお、ハート・ブラザーズ社の長期熟成のモルトはダンカン・テイラー社の提供になるものが多い。

 ブレイズ・オブ・グレンリヴェット '75(ゴードン&マクファイル)
 コニッサーズ・チョイスの一本。32年もの、43度。
 前回は25年ものだった、実に七年ぶりのボトリング。蒸留所創業二年目のウィスキーだが、香味共に非の打ち所がない。
 アルタナベーンとは兄弟蒸留所だが、こちらは重厚な味わい。メイプルシロップや干し葡萄の甘い香り、蜂蜜のような深くまろやかなこくとオレンジ・ピールの風味。フィニッシュは長くドライ。かかるボトルを飲むとカスク・ストレングスにこだわる理由が薄らいでくる。創業は73年と新しいが、ストラスアイラ、グレンキースと共に傑出したモルト。ストラスアイラが甘すぎるという方に強くお薦め。

追記
クラガンモアに関しては、もう一度飲み会を催すに必要なボトルの在庫がある。いずれ機会を持ちたい。
このところ、瓶詰業者について出来るかぎり書くように心掛けている。併し乍ら、頻繁にオーナーもしくは系列が変わるため、間違いも多かろうと思う。ご一報くだされば幸いである。


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2008年05月18日 21:33に投稿された記事のページです。

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