一考さま。名前を出してくださつて恐縮してをります。目耕とはさすがに一考さんご推奨の愉快な虫であると思ひました。ところで、わたくしの手もとにある針聞書別本によると、
「坑腓といふ虫あり。膕から踵を常住の住処とす。蘭書に見ゆる小鬼の如く、槍もて小躍りするといふ。この虫、酒を殊の外嫌ひ、体内に酒精入れば、怏々として槍を研ぐ。一方、加児丘母【編者の註にいはく「こはカルキユムのことなり」】を好み、それなくば鬱々として愉しまず。しかして酒精体内にありといへども、加児丘母なくば、槍立て足を踏みならし、小躍りするかのごとく暴れるなり。こむらがへりといふもの、なべてこの虫の暴れるによらざるべからず」
とあります。昨朝からこの虫に苛まれて、一日ひどく苦しんでをりました。一考さまもお大事に。