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アイラ・ストーム2   一考   

 

 田中香織さんが飲みにいらした。出したのはラガヴーリン12年のカスク・ストレングス、シールダイグのラガヴーリン、そしてアイラ・ストームの三点。すべてカスク・ストレングスである。まずディスティラリー・エディションの12年ものは最悪、次いでシールダイグは旨いが軟弱、アイラ・ストームがこの中ではもっとも美味しいとのご意見だった。それにしても、この三点を私のように一ミリほど飲んだだけで同じ蒸留所のウィスキーと見極めるのはむずかしいとのはなしだが、それは慣れの問題である。私が驚いたのはそれぞれのラガヴーリンに対する偏見のなさについてである。
 彼女は旧ですぺら閉店間際にいらしたお客でモルト・ウィスキーに関する意見の持ち合わせはない。なければこそ、個別の香味のみではなしをする。そしてその意見は大旨正しい。ディスティラリー・エディションの12年は味に纏まりがなく、飲み手をしてどこへも連れて行かない。シールダイグにはちょいと異なる意見があるが、アイラ・ストームの粗粗しさと海塩の香、ブレストの乱暴者を想起させるがごとき港町の無骨には「枝の無骨なるに似ず、・・・さまざまの色に透きつ幽める其葉の間々に」といった風情までをも内包している。要するにアイラ・ストームの前ではシールダイグすらが影を淡くする。
 ラガヴーリンのディスティラリー・エディションを否定するのは難しい。マッカランやボウモアやスプリングバンク同様、それなりに美味だからである。と言うよりは、蒸留所元詰めに対する信仰のようなものがわが国にはある。ディスティラリー・エディションは大量生産のため、斑は少ないかわりに品質は平均化される。この平均化を日本人は好むのである。どこそこの蒸留所の酒はこのような味であると、謂わば安心を買っている。飲む度に味が変われば安心して飲んでいられないのが本音らしい。
 ところが、カスクは均一にはできていない。レダイグのシェリーを持ち出すまでもなく、ボトリングの度に香味は変わる。蒸留所は否定しているが、ラガヴーリンの一部はリフィール・シェリーと私は思っている。これが曲者で、16年ものはこの十年で随分と味が変化してきた、当然不味い方へである。もっか生産調整中だが、このあとどうなって行くのか危惧している。
 それにしても、アイラ・ストームは旨い。それを再確認させてくださった田中香織さんに、スランジバー。


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2007年11月23日 13:37に投稿された記事のページです。

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