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告知   一考   

 

 防水工事の遣り直しが済み、乾くのを待つとかでなにひとつ進まない。何をするにも行き当たりばったり、かくまで無計画、成り行きまかせな仕事というのがどこの世界にあるのだろうか。
 かつてスーパースタジオの斎藤さんと組んで随分多くの書物を拵えた。ひとが半年の制作期日を必要とするムックを毎月作り続けるという無謀に近い仕事だった。しかし、それが雇い人の求めなら応じるしかない。彼も私も睡眠時間は二、三時間、風呂はおろか食事すら時間がなくて打ち切った。期日が迫って手に負えなくなると編輯者仲間に扶けを乞うたこともある。その費用は当然ながら自腹を切る、人件費が私の給金を上回ったこともある。雇い人が問うのは結果であって過程は私が仕切るしかない。できない仕事なら受けてはいけない、受けた以上は全責任を背負い込むしかない。そして仕事の場にあって、責任とは金数でしかない。
 編輯者なら分かっているが、ムックの扱いは単行本である。単行本は期日を守らなければならない、期日を一日でもずらすと新刊配本が不可能になる。そうなれば数千万円の負担を強いられる。従って、斎藤さんも私も命懸けである。十枚の原稿なら一時間、二十枚なら二時間で書き上げた。またムック一冊のレイアウトの処理時間は三時間が限界である。そしてレイアウトは五、六回、表紙は二十回以上の遣り直しを余儀なくさせられる。
 斎藤さんを私に引き合わせた知己は佛蘭西の新訳探偵小説十冊の企画を一箇月、制作を二箇月の併せて三箇月で完結させた。それが仕事である、頂戴する手当の二十倍の利益を雇い人にもたらさなければならない。編輯プロダクションの仕事を五年続けて私は死ぬと思った。私はぼろぼろになって東京を逃散したのである。しかし、その渦中にあって銀花や幻想文学への連載が続き、Y・Nさんとの出会いがあった。
 さて、開店への途は遠い、私の気力は悲しみのなかに失せつつある。北への逐電を夢見ながら焼鳥屋で酒を呑む。


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2007年10月01日 18:21に投稿された記事のページです。

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