ちりめんも山椒も京都では採られない。おそらく、ちりめんじゃこの高級品なら淡路だろうし、生山椒なら京都の錦市場だろう。共に、百グラム三百円はしない。京都産のちりめん山椒が東京のデパートなどで高値で取引されているが、いくらなんでも、あれは高すぎる。50グラム2000円から4000円もする。
最近、丸美屋からふりかけ「ちりめん山椒」が販売された。28グラム、118円である。味はともかく、はじめて妥当な値段で販売されたちりめん山椒である。かなり売れていると聞く、やがて他メーカーも追随することになる。
ですぺらでもちりめん山椒を造っていたが、味に関してはどこの商品よりも自信があった。そして料理人からもそのような評価を受け、しかるべき雑誌に幾度となく紹介された。あれは元々、播磨(山椒の産地だった)の漁師料理、例えばクギ煮のようなもので播磨の家庭ではどこでも造っていた。わたしはそこにちょっとしたアレンジをしただけである。播磨や京都のように鍋で炊かずに、フライパンで煎ったまでである。
戦後、京都の料理人が模倣し、なにも知らぬ文化人が乗せられてちりめん山椒なる伝説が誕生した。伝説は所詮はうわさでしかない。前述の後追いする他メーカーが丸美屋と似たものを出さずに、さまざまな食感のちりめん山椒にトライしていただきたい。文化は今はじまったばかりである。