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ですぺらモルト会解説(レアモルトを飲む)   一考   

 

 レア・モルト・セレクションは花と動物シリーズの好評に気をよくしたユナイテッド・ディスティラーズ(U.D)社がすでに閉鎖された蒸留所や稀少なモルト・ウィスキーを樽出しにて94年よりボトリング。より高価、よりレアなコレクションとして愛飲家に大いなる刺激と満足感を与えたが、既に廃止された。
 熟成に用いたカスクはシェリー樽が多いが、アメリカンオークやヨーロピアンオークのリフィールカスクが主として用いられている。
 知る限りではインチガワー、オルトモーア、カードゥ、カリラ、クライヌリッシュ、クレイゲラヒ、グレン・オード、グレンダラン、グレンモール、グレンユーリー・ロイヤル、グレンロッキー、コールバーン、コンバルモア、セント・マグデラン、ダフタウン、ダラス・ドゥー、ダルユーイン、ティーニニック、ノース・ポート、バルミニック、バンフ、ヒルサイド、ブレア・アソール、ブラッドノック、ブローラ、ベンリネス、ベンローマック、ポート・エレン、マノックモア、ミルバーン、モートラック、リンクウッド、ローズバンク、ロイヤル・ブラックラ、ロイヤル・ロッホナガーが頒布されている。
 その内、ブレア・アソール、グレンモール、ミルバーン、リンクウッド、ベンリネス、オスロスク、コンバルモア、バンフ等の在庫が僅少だがまだある。2001年のリリースにブラッドノックがあって、もっとも新しいボトルでないかと思われる。他ではグレンモア〈バーボン〉がボトリングされている。
 忘れられないのが、花と動物シリーズのカスク・ストレングスで逸品揃い。アバフェルディ、オルトモーア、カリラ、クライヌリッシュ、ダルユーイン、ブレア・アソール、モートラック、リンクウッド、ローズバンクが出ている。96年から97年にかけてレアモルトと並行してボトリングされたが、値以外レアモルトとの違いがどこにあるのか分からない。ただし、香味がまったく異なるのは云うまでもない。

01 カリラ '75(レア・モルト)
 21年もの、61.3度のカスク・ストレングス。
 他に74年蒸留の20年ものと77年蒸留の21年ものあり。
 酒質は軽く色は淡いが、うがい薬や消毒液の錯綜した臭い、スモーキーかつシャープな辛口。しかし、バランスのなさとでも云うべき蒸留所の特徴がU.Dにかかると薄らぐ。カスクのせいだが、ピリピリ感がなくまろやか、より繊細にしてしたたかな味わいに化ける。花と動物の加水タイプはそれが顕著で、とても飲まれたものでない。比較だが、花と動物のカスクストレングスがもっとも、蒸留所の個性を出している。レアモルトはあまりに旨すぎる。バランスのよさで一歩抽(ぬき)んでていると云えば聴こえは良いが、アイラモルトに求めるものでないだろう。

02 クレイゲラヒ '73(レア・モルト)
 22年もの、60.2度のカスク・ストレングス。
 創設は1888年。株主のひとりピーター・マッケーが1890年にブレンデッド・ウィスキーのホワイト・ホースを発売。爾来ホワイト・ホースのメイン原酒となった。現在ではデュワーズのメイン・モルト。
 1998年、ギネス社とグランドメトロポリタン社が合併してディアジオ社が誕生、傘下のUDV社とIDV社も一つにまとまった。しかし、合併は独占禁止法に抵触。デュワーズ社と傘下の四つの蒸溜所をバカルディ社に売却、以降のバカルディ社のニュー・ボトルはアバフェルディのみ。
 ディスティラリー・ボトルは同じU.D社の花と動物シリーズだったが、それと比して遙かにリッチ。アイリッシュ・クリームの香り、オレンジやナッツの風味、長く濃密なフィニッシュ。最良の食後酒のひとつ。元々はオスロスクやダフタウンに似て、心地よいが幾分ショートなフィニッシュが特徴だが、本品のフィニッシュはロング。そのあたりがレアモルトの真骨頂。

03 マノックモア '74(レア・モルト)
 22年もの、60.1度のカスク・ストレングス。
 グレンロッシーとは兄弟蒸留所。共にヘイグとディンプルの重要な原酒モルト。蒸留所の近辺には多くの丘や森が点在し、野鳥の宝庫として識られる。リンクウッドと共に花と動物シリーズのラベルがよく似合う。
 1989年に操業再開。樽の内側の焦がし方が尋常でなく、ウィスキーの色合いを濃厚にする要因となっている。
 フレッシュでクリーン、絶妙の軽み。青い果実、シリアル系の香り。フィニッシュにシナモンの香、暖かみのある切れ上がりを経て、心地よいラスト・ノート。
 ロッホ・デューと名付けられたブラックウィスキーを造っている。内側を極端に焦がしたオーク樽を熟成に用いる。ナッツの香りと太いボディ。滑らかにして濃厚な飲み口と口腔に残る苦みが特徴。わたしの趣味ではないが。

04 モートラック '78(レア・モルト)
 20年もの、62.2度のカスク・ストレングス。
 ダフタウン最古の創業、スペイサイドのよさをすべて備えたメローな食後酒。ジョニー・ウォーカーの原酒モルトのひとつ。六基のポット・スティルはすべて形状が異なり、蒸留作業は煩雑を極めるという。幸いにして、その工程がモートラックの豊かなこくを生み出す要因になっている。
 チョコレート、ダーク・ラム、シェリー酒等の深い甘味、豊かなフルーツ香とペカンの実の香り、僅かに青林檎のキャラクター、充実のフル・ボディ。甘さとピート香のバランスに優れる。どこまでもまろやかにして濃厚、穣々たるフィニッシュ。

05 ヒルサイド '71(レア・モルト)
 25年もの、62.0度のカスク・ストレングス。ボトリングは97年。
 VAT69の核をなす原酒だったが、1985年に閉鎖。モルト・ウィスキーの生産は休止したままである。今後、入手が困難になることは必定。
 モルトの生産は停止されたままだが、麦芽製造部門はフル稼動。アバフェルディをはじめとするU.D社傘下の蒸留所に麦芽を供給し続けている。
 ライトでドライな飲み口だが、若干アルコール臭がある。フィニッシュは長く、スパイシーななかに甘味が残る。
 蒸留所名が幾度となく変わっているが、グレネスクと改名された1980年までの名称はヒルサイド。ケイデンヘッド社とゴ−ドン&マクファイル社から加水タイプが、ケイデンヘッド社、ダグラス・レイン社、ダンカン・テイラー社からカスク・ストレングスが頒布されている。なお、ヒルサイド名義のボトルは本品のみ。

06 グレンユーリー・ロイヤル '70(レア・モルト)
 28年もの、58.4度のカスク・ストレングス。
 同じヴィンテージの29年ものもある。
 アーモンドの香りに、蜂蜜、ピスタチオ、アンゼリカ、ミントの味わい。ライト・ボディだが、酒質は堅く、しっかりしている。緑葉もしくは樹皮を噛んだようなフィニッシュは長く、シナモンの華やかな芳香が残る。
 アロマティックなウィスキーを代表する、東ハイランドの隠れた美酒。宅地開発のため、1985年に蒸留所は閉鎖、ライセンスは92年に取り下げられた。
 他ではカスク・ストレングスがシグナトリー社、ダンカン・テイラー社から頒されている。本品は例によってオロロソ・シェリーのアロマが顕著。そのユナイテッド・ディスティラーズ社から1953年蒸留のの50年ものがボトリングされている。1953年はDCL社(現在のUDV社)がオーナーになった年。

07 ティーニニック '73(レア・モルト)
 23年もの、57.1度のカスク・ストレングス。
 同じヴィンテージの27年ものあり。
 ヒースの花のエキスを用いたウィスキー・リキュール「ドラムブイ」の原酒モルトとして有名。
 生産量は多いが、大半がブレンド用。ケント州の独立瓶詰業者ザ・マスター・オブ・モルト社の17年ものしか手に入らなかったが、1992年から花と動物シリーズが出回るようになった。
 ゴードン&マクファイル社、サマローリ社、ヘッジス&バトラー社、ベリー・ブラザーズ&ラッド社、イアン・マクロード社、ムーン・インポート社から加水タイプが、キングスバリー社、ダグラス・レイン社、イアン・マキロップ社からカスク・ストレングスが頒布されている。

08 ブローラ '77(レア・モルト)
 21年もの、56.9度のカスク・ストレングス。
 ナッツのオイリーな風味と熟した果実の甘さ。煤の臭い、焦げたオークのスモーキーなキャラクター、噛みごたえのあるタンニンを伴うスパイシーなフィニッシュ。クライヌリッシュと比してドライ、また極めてスモーキー。
 残僅少につき足りないときはご勘弁。
 1967〜8年に新築された蒸留所がクライヌリッシュと名付けられるまでは、旧蒸留所がクライヌリッシュと呼ばれていた。そして、その旧蒸留所がブローラと改名されたのである。従って、ブローラ蒸留所名義で造られたモルト・ウィスキーは69年から83年までの14年間のみ。69年以前に蒸留されたクライヌリッシュはブローラと同じものである。現在、跡地はクライヌリッシュの熟成庫とヴィジター・センターになっている。
 アイラのポート・エレン、ローランドのセント・マグデラン同様、ストックが尽きた段階で飲めなくなるモルト。強烈な個性を味わえるのは今を除いてない。

09 セント・マグデラン '79(レア・モルト)
 19年もの、63.8度のカスク・ストレングス。
 蒸留所が建てられたのは1765年、しかしアダム・ドーソンによって蒸留がはじめられたのは1797年とされる。1914年、ローランドの五つの蒸留所が吸収合併してできたSMD(スコティッシュ・モルト・ティスティラリーズ)に参加。リトルミルやローズバンク等と共に最古参の蒸留所だったが、1983年に閉鎖。建物は外観はそのまま、高級アパートになった。ストックが尽きた段階で永久に飲めなくなるモルト・ウィスキー。地名のリンリスゴー名義のボトルもある。
 ローランドの特徴であるソフトでスムースな飲み口、ニートが似合うミディアム・ボディ。フィニッシュは程良く、スイートからドライへ。後口にごく僅かな苦み。
 ローランドの銘酒キンクレイスの生産終了が75年、レディバーンが76年、ついで「幻の酒」と化すのがセント・マグデランである。ディスティラリー・ボトルは頒されていない。かつてのボトル70年蒸留のレア・モルトは極めて入手困難。

10 アードベッグ '67(ダグラス・レイン)
 オールド・モルト・カスクの一本。ダーク・シェリー樽の32年もの、47.5度のカスク・ストレングス。限定185本のシングル・カスク。
 レアモルトを十本揃えるつもりが足らなくなった。そこでレアモルトのコンディションに近いものから本品を撰んだ。ダブルマチュアードと異なり、32年間シェリー樽で熟成されたモルトである。いささかカスク由来の渋味が強いが、珍品であるに違いない。
 似たボトルがシグナトリー社からもボトリング。67年蒸留、ダーク・オロロソの樽による30年もの、49.8度のカスク・ストレングス。香味はこちらに軍配が上がる。


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2011年08月02日 16:04に投稿された記事のページです。

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