原材料すなわちモルトがスコットランド産であろうが、アメリカ産であろうが、カナダ産であろうが、日本国内で蒸留したウィスキーはジャパニーズ・ウィスキーである。この場合のモルトとは乾燥させた麦芽をミルにかけて粉状にする。この粉すなわちグリストのことである。
各蒸留所は原材料(グリスト)をモルトスター(精麦工場)から仕入れる。その消息は、ラフロイグやボウモアのように自らの蒸留所でフロアモルティングを行っているところですら、例外ではない。自社での精麦はいわばデモンストレーション用で、生産量全量を賄っている蒸留所はおそらくないだろう。
モルトスターは自社のオリジナルのモルトというものを持っていない。蒸留所のレシピに則って造るのである。従って、ポートエレンのモルトといえども、ピートを焚いていないモルトがある。アードベッグのモルトをポートエレンで精麦するときはピートの数値を上げる。そしてアイラモルトのモルトがポートエレンとは限らない。スペイサイドやハイランドのモルトスターも使っている。
日本の蒸留所もモルト(グリスト)は海外のモルトスターから購入している。豆腐や醤油の原材料や蕎麦粉を輸入に頼っているのと同じである。中国産の蕎麦粉であろうが、カナダ産の蕎麦粉であろうが、日本の水を用いて打てばそれは国産品である。
なぜこのようなことを書くかと云えば、日本のウィスキーはすべて国産と思っているひとが未だにいらっしゃるからである。それをしてニセモノ呼ばわりされた日には堪ったものでない。