レイアウトが崩れる方・右メニューが表示されない方: >>シンプル・レイアウトへ

« ですぺらモルト会 | メイン | 修正 »

ですぺらモルト会解説(シーグラムの蒸留所を飲む)   一考   

 

 シーバス社はスペイサイドの東端アバディーンで1801年に創業。1838年にジェームス・シーバスが事業に参加。その後、彼の弟ジョンも加わり、シーバス・ブラザーズ社として発展する。同社がブレンデッド・ウィスキーを発売するようになったのは1870年代からで、1949年にはシーグラム社の傘下に入る。商品名のシーバス・リーガルはシーバス家の王者の意で、スコッチのプリンスとも称され、二度のロイヤルウォラント(王室許可書)を授かっている。ちなみに、12年ものをはじめて発売したのもシーバス社である。ウィスキーの熟成は12年をもって完成する。あとは枯淡の味わいとなって若さは喪われてゆく。
 グレン・リヴェット、グレン・グラント、ブレイヴァル(ブレイズ・オブ・グレンリヴェット)、ストラスアイラ、グレンキース(ストラスアイラの第二蒸留所)、ロングモーン、ベンリアック(ロングモーンの第二蒸留所)、アルタベーン、キャパドニック(グレン・グラントの第二蒸留所)等、シーグラム社が所有していた九つの蒸留所は実に旨いモルトを造っていた。2001年の同社の売却後、閉鎖された蒸留所、売却された蒸留所など消息はさまざま、もったいないことをしたものである。現在シーグラム社はペルノ・リカール社傘下となっている。

 ペルノ・リカール社による買収後、存続が決まった蒸留所はグレン・グラント、グレンリベット、ロングモーン、ストラスアイラ。閉鎖が決まったのはアルタベーン、ベンリアック、ブレイヴァル(ブレイズ・オブ・グレンリベット)、キャパドニック、グレン・キースだが、もっかのところ現実に閉鎖されたのはグレン・キースとキャパドニックで、2002年に閉じられた。ブレイヴァルは生産調整のため操業停止のまま、アルタベーンは2005年5月に操業再開が報じられた。ベンリアックは、2004年にバーンスチュワート社の前オーナーであったビリー・ウォーカーが中心となってシーグラム社から蒸留所を買収。クラシックなスペイサイドタイプのモルトとピーティータイプの二種類のシングルモルトを醸している。また、一部フロアモルティングを復活、蒸留所内で麦芽の供給を行っている。
 なお、ペルノ・リカールの子会社キャンベル・ディスティラリーズが所有していたアベラワー、グレンアラヒ、エドラダワーのうち、エドラダワーはボトラーのシグナトリー社が2002年に買収している。
 2001年のシーグラム社のワイン・スピリッツ部門の獲得のあと、ペルノ・リカール・グループはアライド・ドメック社を2005年に買収。アライド・ドメック社はバランタインやマーテルで知られるコングロマリット。次いで2008年、スウェーデン政府からヴィン&スピリト社を買収したことにより、ワイン・スピリッツ部門ではディアジオ社を追い越し、世界第一位の企業グループとなった。


01 ストラスアイラ12年※
 43度のディスティラリー・ボトル。
 ディスティラリー・ボトルは本品のみ。シーバス・リーガル並びにロイヤル・サルートの核をなす原酒モルト。完熟林檎の香りを持つ卓越した食後酒。
 ヘーゼルナッツの香り。滑らかでオイリー、佳麗なこく。シェリー酒を想わせるきらびやかな風味。長くスムース、揺蕩(たゆた)うようなフィニッシュ。

02 ストラスアイラ '90(ダグラス・マクギボン)
 プロヴァナンスの一本。10年もの、43度。
 ダグラス・マクギボン社の創業者は現在のオーナーの祖父にあたるが、彼はアイラ島で水没した蒸留所、ロッホインダールとポートシャーロットのマッシュハウスの責任者。スコッチウイスキーへの愛情とこだわりは、研修生としてブルイックラディ蒸留所で働いていた時代に育まれ、1949年からスコッチウイスキーの販売をはじめてから頑なに“ノーカラーリング・ノーチルフィルターリング”を貫く。
 プロヴァナンス・シリーズは2009年2月で終売、リニューアルの予定。

03 ストラスアイラ '91(ダグラス・マクギボン)
 プロヴァナンスの一本。10年もの、60.2度のカスク・ストレングス。
 ダグラス・マクギボン社は1949年、グラスゴーで組織された瓶詰業者。蒸留所の作業に携わった職人の末裔による同族会社にして、ダグラス・レイン社とは兄弟会社。広大な熟成庫を持ち、60年代以降、色付けとチル・フィルターを拒み、「プロヴァナンス」の名のもとにコレクションを頒布。特にアイラ島の蒸留所とは太いパイプを持つ。「クライズデール」同様、熟成年数の若いモルトが中心だが、共に品質のよさでは一頭地を抜く。
 本品は記載はないものの、リフィール・シェリーと思われる。ストラスアイラは多くのカスク・ストレングスがボトリングされているが、本品は他と比してまろやかさで卓れる。

04 ストラスアイラ '89(クライズデール)
 9年もの、63.3度のカスク・ストレングス。290本のリミテッド・エディション。
 ザ・クライズデール・オリジナル・スコッチ・ウィスキー社は1998年の設立で、ブラックアダー社のロビン・トゥチェクが代表を務める。熟成5年から10年の比較的若いカスク・ストレングスをシングル・カスクにて瓶詰め。他のボトラーとの差別化を図る。低温濾過、加水、着色を一切行わず、モルト・ウィスキーの素地を知るには最適。ダグラス・マクギボン社の「プロヴァナンス」と共に一押しのコレクションである。総称の「クライズデール」とはグラスゴー近郊に1919年まで存在した蒸留所名。
 2006年にボトルをリニューアル、ダンピーボトルに変わり、若いものに限らず長期熟成品のボトリングをはじめた。

05 ストラスアイラ '89(ブラックアダー)
 ロウ・カスクの一本。シェリー・ホグスヘッドの11年もの、61.3度のカスク・ストレングス。限定278本のシングル・カスク。
 コルク栓を抜く、グラスに注ぐ、静かに回してトップ・ノート、口に含む、口腔に拡がる、喉元を過ぎゆく、そしてラスト・ノート。スペイサイドのすべてのモルトの中で、香りの階調をきわやかに愉しむにはストラスアイラが最適。
 ブラックアダー社は1995年にザ・モルトウイスキーファイルの著者であるジョン・レイモンドとロビン・トゥチェクが創業したウイスキー専門のボトラー。ロウ・カスクの発想はきわめて単純でユニーク。大きな木片のみを除去、オリ(沈殿物)も一緒にそのままボトリングする。もちろん、氷点下フィルターもカラメル着色も施さず、すべてはカスク・ストレングスである。

06 ストラスアイラ '89(アバディーン)
 オーク・カスクの13年もの、62.5度のカスク・ストレングス。シングル・カスク。
 アバディーン・ディスティラーズ社は1993年頃、スコットランド北東部のアバディーンで設立。ホグスヘッドからのボトリングを専らとする。ヨーロッパ市場向けのボトリングだが、過去一度、スリーリバーズによって極少量が日本へも入荷している。本品はその一本。

07 グレン・キース '93(ゴードン&マクファイル)
 コニッサーズ・チョイスの一本。14年もの、46度。
 ボトラーのグレン・キースはディスティラリー・ボトルと比してべっこう飴の芳ばしさに少し欠ける。これはボトラーのグレン・キースに共通して言えることで、シェリー香がより弱く、やや辛口に振られている。ちょうど、ゴードン&マクファイル社のマクファイルとディスティラリー・ボトルのマッカランの関係に似ている。私はボトラーの方が好きなのだが。
 コニッサーズ・チョイスは2008年にラベルと外箱がリニューアルされた。

08 グレン・キース '95(イアン・マクロード)
 チーフテンズの一本。ホグスヘッドの13年もの、43度。3樽1572本のリミテッド・エディション。
 グレン・キース蒸留所は2001年にペルノ・リカール社によって買収されたものの、休止状態が続き、どうやら取り壊されるもよう。ボトラーへの出荷が極端に少ないので、流通在庫はローズバンクよりはるかに少ない。飲むなら今のうち。

09 グレン・キース '85(モンゴメリーズ)
 シングル・カスク・コレクションの一本。17年もの、43度。
 モンゴメリーズ社はマキロップ社と共にアンガス・ダンディ社の傘下。なお、マルコム・プライド社はアンガス・ダンディ社と同資本のカンパニー。なにを言いたいかというと、玉石混交だということ。

10 グレン・キース10年※
 43度のディスティラリー・ボトル。
 ストラスアイラの第二蒸留所として1957年に誕生。すべてがシーグラムの原酒に回されたため、ディスティラリー・ボトルは一度も頒布されたことがなかった。待望のボトルは94年から。しかし、蒸留所は2000年から休止状態に入り、本品はまったく生産されていない。
 火にかけられた鼈甲飴の芳ばしさ、インデペンデント・ボトラーのそれと比してシェリー香が強く、より甘口に振られている。

11 キャパドニック・ピーティー・バレル '98(ジャン・ボワイエ)
 ベスト・カスク・オブ・スコットランドの一本。スモール・ピーティー・バレルの9年もの、43度。970本のリミテッド・エディション。
 ヒビテン液(洗浄剤)のような不思議な香りはなく、スペイサイド特有の西洋梨や完熟林檎の馥郁たる香りを伴った辛口。その方がよほど不思議である。キャパドニックのヘヴィリー・ピーテッドは現在のところ本品のみ。
 シーバス・リーガルの原酒として使用されていたため、シングルモルトのディスティラリ・ボトルは一度も発売されていない。グレン・グラントと同じ仕込み水や麦芽を使っているのに味わいは異なる。

12 キャパドニック '74(イアン・マクロード)
 チーフテンズの一本。ホグスヘッドの28年もの、46度。3樽、636本のリミテッド・エディション。
 グレン・グラントの第二蒸留所として1898年に設立されたが、わずか3年後に操業停止、再開されたのは1965年。グレン・グラントと共に1977年にシーグラム社の傘下に入った。グレン・グラント、グレンロセス、グレン・スペイ、スペイバーン、キャパドニックと五つの蒸留所がローゼスの狭い町なかにひしめいているが、グレンロセスを除き、印象の薄いウィスキーが多い。
 土屋守さんは「銀みがきの粉、ヒビテン液(洗浄剤)のような不思議な香り」と著している。商品名で恐縮だが「パイプマン」を思い起こしていただきたい。要は苛性ソーダ、水酸化ナトリウムの臭いである。


←次の記事
「修正」 
前の記事→
 「ですぺらモルト会」

ですぺら掲示板2.0トップページへ戻る

このページについて...

2009年02月27日 10:51に投稿された記事のページです。

次の記事←
修正

前の記事→
ですぺらモルト会

他にも
  • メインページ
  • アーカイブページ

  • も見てください。

    アーカイブ

    ケータイで見るなら...


    Google
    別ウィンドウ(orタブ)開きます。

    牛込櫻会館(掲示板1.0他)内
    ですぺらHP(掲示板2.0他)内
    Powered by
    Movable Type 3.34