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まなざし   一考   

 

 このところ、摂食障害のひとが来る。とは申せ、二度目の来店である。名前はまだ知らない。名を知らないのか覚えていないのか、定かでない。摂食障害というのも自己申告だけで、真偽は分からない。ただ、見るからに摂食障害者である。摂食障害と書いたが、正確には神経性食思不振症である。極度の不食と高度のやせとを主徴とする病いで、根には成熟することへの嫌悪感がある。そのようなひとにものを喰えとは言えない、嘔吐するだけなのは分かっている、困しむのは本人だけである。
 友人で彼女より上背があって、さらなる痩身を知っている。その彼女Y・Nさんは摂食障害者ではない。にもかかわらず、ひどく瘠せている。従って、瘠せていることは私にとって驚きとはなり得ない。ただ、どこかしら気になるひとである。
 彼女は某大学で露文を学んでいる。そのせいか、A子さんのことを訊ねるためにいらしたようである。事情があってA子さんのことを私は掲示板では書かない。
 「どこかしら気になる」と書いた。気になる一は目のくらさにある。虚ろではなく、昏いでもなく、と言って幽い、冥い、ことごとくが外れる。やはり暗い目になるのだろうか。涼やかな眼差しだが、媚を売る目ではない。淋しげな眼差しだが、なにかを訴える目ではない。どこかを視ているようで、どこも視ていない。しかし、この稀い存在が投げかける眼差しは何故か記憶の底に刻まれてある。この記憶はどこからくるのだろうか。自分の目のなかに焼き付いたもうひとつの自分の目なのだろうか。
 見るべきものを喪ったのか、それともはなから見るべきものなどなかったのか。この病いのひとは精神的に打ちとけないというが、そのあたりの消息をいつの日か話し合える日が来るような気がする。


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2007年11月27日 10:10に投稿された記事のページです。

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