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友よ、いずこ   一考   

 

 昨夜、基本となる引越が済む。思いのほかウィスキーが多い、あと百本は減らさなければならない。二、三箇月掛けて調整していかなければ。食器とグラスは種類が多くて手が付けられない、こちらも大幅な入れ替えが必要である。今日はドアが完成し、厨房のフードを除くすべてができあがる。冷ややかな新店舗がやっと形をなす。このひえびえとした取り澄ました店がやがて熱を帯びるであろうことを願っている。
 昨夜は手伝ってくださった方と向かえの白木屋へ赴く。ゴールデン街へと思ったが折あしく日曜日、わざわざ開けさせるには及ばないと近隣で間に合わせる。
 それにしてもよい酒だった。とわずがたりに自らの過去を語る。
 一所懸命に消え入ろうとする、もしくは消え入ることに命をかける。文学に於ける懸命の地とはそのようなものと心得ている。そして、公験文書を添えて累代相伝されるとの習いは文学には馴染まない。文学とはなにがどうあろうとも、一代限りでなければならない。
 血筋も友も連れもこの世界にあっては意味をなさない。「意味をなさない」とは譲状や手継文書の無効を示唆するにとどまらず、それらの存在がなんらの救いをもたらさないとの戒めである。この戒めを解さない限り、どこまで行こうとも、そのひとにとって文学が癒しの範疇から抜け出ることはない。
 癒しからの脱出をひとに薦める気は毛頭ない。ご託宣は「ごた」とも称し、なによりもまず不遜である。加えるに、他人のことなど私の知ったことではない。好きに生きて好きに死んで行けばよろしいのであって、それを啓蒙しようなどという傲慢さの持ち合わせはない。
 と言うような消尽についてお喋りした。文学に於ける基本はなによりもまず、ひとりになることである。そしてその孤絶に耐える強靭さが必要になる。強靭さとは訪ねてくる友を切り捨て、容赦しない覚悟である。そして覚悟とは自己愛に陥らないための心構えである。そのために典籍が存在する。ひとの悩みが個にとどまらないことを書物は教えてくれる。
 観念論でもなく、「ロマン主義的精神主義でなく、実証主義である。従って理想主義でない。コモン・センスである。法則と概念とを重んじ、非常に抽象的である」ところのもの、それが書物だと私は信じている。
 よき話相手に恵まれたと思う。感謝。


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2007年10月22日 15:50に投稿された記事のページです。

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