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高林鉄工所   一考   

 

 バックバーの鉄板が真っ赤に錆び付いていた。一枚五十キロの鉄板を鉄工所で半裁にしていただき、その二十四枚の鉄板をディスクグラインダーで研いた。プロが用いる道具は家庭用の工作機械と比して桁外れに重量があり性能が勝る。結果、機械に振り回されて左手の甲に傷を負ってしまった。三日目にして、やっと出血が止まった。研摩に行ったのであって、怪我をしに行ったのではない。従って、傷をかまわずにみがきに精を出した。
 ところで、五十六本のアンカーをコンクリートに打ち込んだのだが、傍で見ていて悲鳴を上げた。身体を弓形にし、天井に大型の鉄の金槌でアンカーを叩き込むのだが、非凡な体力の持ち主でなければ努まらない。私は六十キロの米俵と同じく六十キロのプロパンガスのボンベの配達を長くしていたので、瞬発力は多少はあるつもりだったが、とてもかなわない。店の工事に立ち会って自らの老いを噛み締めさせられる結果となった。既に喧嘩はやめたが、止めてよかったと思い知らされたのである。
 鉄工所の社長とはいっても三十五歳なのだが、研摩の前日、焼鳥屋へ同行させていただいた。彼は鳥胆の叩きを、私ははらみの馬刺を注文したのみで、あとはひたすら飲み続けた。焼酎が二本空いたまでは覚えているが、そのあたりから後の記憶は定かでない。ただ、彼は間違いなく酔いつぶれていた。しかるに、彼は朝の七時から鉄板の切削をこなしていた。私が目を醒ましたのは十時過ぎ。ここにももまた、靴音高く追い立ててくる老いとの逢着があった。

 追記。サントリー山崎のヘビーピーテッドが近く売り出される。ちょいと味見してみたが実に旨い。パシフィック・カレドニアンのアイル・オブ・ジュラを思い起こしていただきたい。かのボトルはジュラ蒸留所のマスターブレンダーのリチャード・パタースンと同蒸留所長マイクル・ヘッズ両氏によるボトリングだったが、従来のエディションと異なり強烈にピートを焚いていた。今回の山崎もサントリーでははじめてのパワフルでスモーキーなフィニッシュが堪能できる。シェリー・カスクとの同時発売だが、ヘビーピーテッド・タイプがお薦め。頒価は9000円、ぜひお試しいただきたい一本である。


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2007年10月15日 13:20に投稿された記事のページです。

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