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各種ワインについて   一考   

 

 ワインはスティル・ワイン(赤、白、ロゼ)、スパークリング・ワイン、アロマタイズド・ワイン、フォーティファイド・ワインの四タイプに分けられる。香草や果実等の香味を付されたワインがアロマタイズドもしくはフレーバードで、ヴェルモット、デュボネ、ジンジャー・ワイン、サングリア、キール等が代表的。フォーティファイドは酒精強化ワインと訳され、シェリー、ポート、マディラ、マルサーラ、マラガの他、仏蘭西のヴァン・ドゥー・ナチュレルやヴァン・ドゥ・リクールがあり、コニャック同様、百年を超える長期熟成のものもある。フォーティファイド・ワインは高級品になるほど澱が多く、開栓と同時に濁り始める。その日のうちに飲みきるしかない。

 【フルーツワイン】
 サングリアはワインにオレンジや檸檬果汁等の香味と甘味を加えたもので、西班牙の国民酒。キールは辛口の白ワインにカシス(黒すぐり)を加え、風味に変化を持たせたもの。

 【マルサーラ・ワイン】
 シチリアの果実酒。熟成期間によって、フィーネ、スペリオーレ、ヴェルジーネに分けられる。フィーネは甘口、ヴェルジーネは長期熟成の辛口。スペリオーレは辛口が主だが、甘口もある。辛口をスペリオ−レ・セッコ、甘口をスペリオーレ・ドルチェと英国式に表記することもある。
 三十種ほどが輸入されているが、モスカート・パッシート・ディ・パンテレリアとディエゴ・ラッロ社のヴェルジーネ十二年ものが美味。他に、カルロ・ペレグリーノ社の創業年を冠した三十年熟成品ヴェッキオ・リゼルヴァ・ヴェルジーネ1880も美味。
 ですぺらでは三十種すべてを置いていたが、出水扱いのマリニ以外、すべてはホテルに買い取られた。

 【マディラ・ワイン】
 葡萄牙領マディラ島で醸される。スピリッツを加え、乾燥炉(エストゥファ)で最終醗酵させる。温熟の間に白ワインは淡黄色から暗褐色に色付き、マディラ特有の芳香を蓄える。辛口から甘口へ、セルシアル、ベルデーリョ、ブァル、マルバジアもしくはマルムジーの四タイプに分けられる。五〜六十種が常時輸入されているが、ボルゲス社のハーフ・スイートやアントニオ・エドゥアルド・エンリケスの十年ものが美味。更に、値は張るがマイルズ・マディラ社のマルバジアとブァルは共に絶品。
 ちなみに、エンリケス社の製品は十三種すべてが輸入されているが、ジャスティーノ社のものと共に品質は安定、評価も高い。他では1860年創業のベイガ・フランカ社の原酒をシルバ・ビニョス社がボトリングしたセレクテッド・ミディアム・ドライも値の割にはまずまずの味わい。
 ジャスティーノ社ではマルムジーのヴィンテージ・タイプがお薦めだが、近年倉庫の奥から発見されたオールド・リザーヴは特筆もの。十九世紀後半の樽で、コンディションは最高だが、ヴィンテージを特定できず、「Old Reserve」規格として瓶詰め。現存する最古の葡萄品種とされるテランテス種を用いている。同種は、「ワインを造るために神が与えた葡萄」と讃えられ、当時は生食は厳禁。十九世紀末のフィロキセラ禍の後も接ぎ木されることなく、結果、収穫量は激減、ごく僅かの株がマディラ島に遺されるのみ。
 こちらも僅かに二本を残して、約三十本はホテルに買い取られた。

 【ポート・ワイン】
 葡萄牙を代表する葡萄酒で、ブランディーを加えて醗酵を止め、甘味を残す。ルビー、トーニー、両者をブレンドしたスペシャル・ブレンデッド、白葡萄から醸するホワイト、数十年瓶詰熟成するヴィンテージ・ポート等がある。ちなみに、ヴィンテージ・ポートは大量の澱を生じるのでデキャントの要あり。ボトリングから十五年目位が飲み頃。なお、レイト・ボトルドと称する、澱引きを施したヴィンテージ・ポートもある。
 ワレ社、テイラー・フラッドゲート&イートマン社、レアル・コンパニア・ベーリャ社のものが評価高く、廉価版ではカレム社のヴィンテージ・ポートがお薦め。いずれにせよ、コニャックとポートは安物に手を出さないのが賢明。
 他ではグラハム・マルベドスのヴィンテージものがお薦め。葡萄の作柄に恵まれた年にのみ生産されるが、トーニーの樽による熟成とは異なり、同品は長い瓶熟を経る。従って、若々しさと熟成香という相反する香味を併せ持つ。

 【シェリー】
 西班牙の南西端アンダルシア地方のヘレス及びモンティリャ・モリレス地区を中心に醸される。ブランディーの添加によって白ワインの醗酵を止め、甘味を持たせ酒精を強化する。フロールと呼ばれる上面酵母の膜の繁殖度、ソレラと称される独特の熟成システム等で、風味はバラエティに富む。パラミノ種を原料とするフィノ、アモンティリャード、オロロソ。葡萄の品種名でもある甘口のペドロ・ヒメネス。サンルカール・デ・バラメーダ産のマンサニーリャ(フィノ・タイプの辛口)の五つのタイプに分かれる。また、オロロソ自体、辛口と甘口(クリーム)に分かれ、オロロソとアモンティリャードの中間の性質を持つパロ・コルタードも少量ながら生産されている。他にクロフト・オリジナルのように各タイプのシェリーをブレンドしたものもある。

 ヘレス地区のマルケス・デル・レアル・テソーロ社の創業は1860年。フィノはキリッとした味わいとアロマティックでナッティーな香り。トラディショナル・オロロソはヘーゼルナッツの香りと干し葡萄の味わい、熟成を想わせるテイスト。クリームはペドロヒメネスのとろりとした甘さ、杏のような雅な香り。また、同社のティオ・マテオ・フィノは評価の高い一本。
 モンティリャ・モリレス地区のバルケロ社の特徴はデリケートな酸味、ワイン好きには堪えられない。グラン・パルケロはフルボディであるにも関わらずアロマティックなアモンティリャード。
 有名なハーベイ社ではパロ・コルタードにとどめをさす。パラミノ種から造られた逸品で長期熟成古酒、甘味と雅味の調和、ブーケを愉しむに最適のシェリー。
 ハーベイ社と双璧をなすバルデスピノ社は創業年には諸説あり不明。最も古い家族経営のシェリー・メーカー。亜米利加では一番の売れ筋ブランド。アモンティリャード・コリセオの他、パロ・コルタードとマジェスタッドと名付けられた辛口オロロソが美味。皇帝陛下と名付けられた百年超熟成の逸品もある。
 サンチェス・ロマテ・エルマノス社は1781年の創業。家族経営のシェリー、ブランディー専門メーカー。オロロソ三十年とアモンティリャード三十年、ラ。サクリスティア・デ・ロマテ・ペドロヒメネス三十五年がある。
 私がもっとも好きなエミーリオ・ルスタウ社は家族経営のシェリー醸造所。一切の加糖、着香、氷温濾過を施さず、謂わばスコッチのシングル・バレル。香りはユニーク、酒質は軽く極端にドライ。大手メーカーものと比して、フィノやマンサニーリャは些か水っぽく感じられ、好き嫌いの分かれるところ。初手は甘口がお奨め。同社がボトルに冠するアルマセニスタとは、小さな醸造所に携わる人、もしくはそのシェリーのこと。
 ルスタウ社は小規模な生産者から集めたシェリーをブレンドすることなく出荷、生産者名が記されたラベルが多い。ちなみに、全ボトルにナンバーが記入されているが、分数はソレラの最下段の樽の数を表す。エンペラトリス・エウヘニアはトネル樽の逸品、1895年の樽詰めになる百年もので筆舌に尽しがたい一本。
 文中に著した以外では、ウイリアム&ハンバート社のドス・コルタドス、ゴンザレス・ビアス社のデル・デューク・アモンティリャードとノエ・ペドロヒメネス、ボデガス・ピラール・プラ社の熟成品二種、即ちエル・マエストロ・シエラのオロロソとアモンティリャードが特にお薦め。
 こちらは三百本を越える逸品を東京へ持ち込んだが、沖山さんが数本を飲まれたのみ。他は四本を残してすべてホテルへ身売り、酒に対して申し訳がたたず、慙愧に堪えない。


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2007年06月14日 05:16に投稿された記事のページです。

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