先日、見知らぬひとが来店。女性のひとり客は珍しくないが、紹介者がどなたなのか分からない。例え常連さんであろうと、名前を覚える気がまったくない。そちらも相方にすべてを委ねていた。
客に限らない、友人や連れ添いの名前を忘れることもしばしばである。はじめての公演を催してくださった「さくら」の馬場さんの名前も忘れていた。相方にしてからが、西明石の開店前に大掃除を手伝ってもらっている。その後も何度かmoonさんと連れ立ってきているのだが、いざ二人きりになると名前が思い出せない。それはひどすぎると叱られたが、思い出せないものは仕方がない。実はモルト会のメンバーの名前すら覚えていないのである。
その逆もあって、二人目の連れ添いは興奮すると決まってひとの名を叫びつづける。当然男の名前である。どういう関係だったかは知るよしもないが、私はただ面白がって聴いている。
その彼が私であろうが、私がその彼であろうが、そのような瑣末なことはどうでもよい。たかが名前である。そのようなことよりも、エクスタシーの場にあって、かかる弁証法的ないしは倒錯的言葉が飛び交う彼女の知的回路に深く興味があった。