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一考 | ところで著作権は・・・

 moondialさんへ
 夥しい量のCDを恐縮です。あなたの家でお聴きしたなかで、私が訊ねたのがバッハの「ヴァイオリンソナタとパルティータ」だけだったとはお寒いかぎりですね。実はむかし、田村隆一さんが身を震わせて聴いていらした、それがフランス組曲だったかブランデンブルグ協奏曲だったかは忘れてしまったのですが、首を振りふり、髪の毛を掻きむしり、全身をわななかせ、涙を流し、洟をすすりあげ、最後には失神状態にまで立ち至る、とにかくあまりもの迫力に度肝を抜かれてしまったのです。その後には相澤啓三さんがいらっしゃいます。名は控えるように云われていますので書けませんが三ヶ日のクラシックマニアとも深いお付き合いをさせていただきました。それやこれやで、いつかしら私は音楽のはなしは避けるようになったのです。かなわないことは教わるのが一番、私のような半可通がお付き合いできるのは自転車か金魚か製本技術、もしくは古本か酒のはなしぐらいなものですよ。ですぺらにあっても、写真、映画、音楽、芝居、舞踊のはなしは聞こえないふりをしています。
 短い人生でかかわりを持てる対象はごく限られます。恋愛同様、なにかを選ぶのは他を蔑ろにすることであって、そこには偶然性への寄り掛かり、言い換えれば強い差別意識が働きます。その意識についてはここでは書きませんが、区分けを無意識に繰り返してしまう自らの至らなさ、かたわな部分、ゆがめられた領域に興味を抱くのです。だって、私は五人もの女性に逃げられたのですから、その理由は知りたくもありませんが、私の悪意ぐらいはもう少し自分自身が知っていてもいいのではないかと思うのです。ルーツとかアイデンティティという言葉が嫌いですが、その理由は相互依存の先にある偏見や先入観の中にしか個はないと思うからです。

 今回ご送付に預かりし膨大なCD、その選択眼と賭けられし元手、すなわちあなたの歪な趣味、邪な精神をうかがい識ることが、私にとって最高の快楽であり、明日を生きる糧そのものになるのです。心して聴かせていただきます。どうもありがとうございました。



投稿者: 一考    日時: 2004年03月23日 03:25 | 固定ページリンク





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