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一考 | 酒井潔のことなど

 大変な一箇月でした。細かいものに積み残しが出ましたが、難儀なものはあらかた終了致しました。ギャラリー・カフェsakuraにおける26日のトーク、27日は48枚、28日は12枚の解説を脱稿。いささか疲れ果てました。27日はですぺらを薫子さんにまかせ、出先で朝までキーボードを叩いておりました。りきさん、テイラーさんをはじめ、御来店のみなさまに迷惑をお掛け致しました。
 11月の10日に酒井潔の「悪魔学大全1」が学研から上梓の予定。拙い解説を付しました、お買い上げ下されば幸甚です。
 その酒井について一言。酒井潔の著書のなかに「確固たる権威」という言葉がでてくるのに興がさめる思いがしました。社会的な承認を得られないのが自明であるがゆえの権威への希求、それは分かりますが、権威の裏面にはおおむねセンチメンタルな情動が寄生しています。その感傷をこそ表現していただきたかったのにと、私などは願うばかりなのです。
 文献の渉猟・博捜は当然として、文芸上・風俗学の研究上、なぜその文献が必要なのか、その必要性の表明がなされなければ、それは単なる焼き直しにしか過ぎず、とても換骨奪胎の域にまで達しているとは申せません。
 もっとも必要性などという概念はこの世に存在しません。「冷斎夜話」に「然れども、その意を易えずしてその語を造る、これを換骨法と謂い、その意を規摸してこれを形容する、これを奪胎法と謂う」と著されているように、独自性の問題でもなく、あくまで修辞学上の問題なのです。謂わば精神の修辞法とでもしておくしかなさそうです。表現には必然性もオリジナリティもなく、忖度の繰り返しでしかないわけです。その忖度、すなわちいかに読み解き、いかに読み替え、いかに書き換えるか、スタイルと申しますか形振りが大事との消息はそこらあたりに派生するようです。
 評論家と称するひとたちは歴史的時間を引き算の対象にします。確かに不都合な部分は時代のせいにするのが無難な策なのですが、同時代に小林秀雄や柳田国男も活躍しているのです。圏外文学を前に、今回はいろんな意味で頭を抱え込みました。酒井潔はとんでもない難題を私に突きつけたのです。追々、掲示板で考えていきたいと思っています。



投稿者: 一考    日時: 2003年10月30日 22:18 | 固定ページリンク





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