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高遠弘美 | 一考さんへ

Vous avez raison! 一考さん。
まつたくね。でも老来、とんとご婦人に縁がなく、折角のお勧めの方法も無骨な私には無縁のやうで哀しいだけですが、実は書かなかつたことがあります。一考さんに勧めて頂いた窪田般彌詩集『老梅に寄せて』を東京堂で買ふことができました。おお、さすが東京堂。
窪田般彌といへば、いまさら私などが申すまでもなく、「独楽」(ひとりたのしむなどと!)「烏賊」(ああ、香料の湯ぶねにひたりきり、笑ひながら死んでゆく海のエピキュリアンよ)そのほかあまたの記憶に残る詩を書いた詩人ですが、生来人見知りをする私は、仏文科の学生のとき、仏詩の授業で窪田般彌のクラスと村上菊一郎のクラスをどちらか選ぶことになつて、何だか怖さうな(つまり不出来な私ごとき学生には厳しさうな)窪田先生を敬遠し温顔の村上先生のクラスに行つたのでした。同様の理由で平岡篤頼さんには一度も教はつたことがありません。しかし、窪田般彌の詩は好きで、今度の詩集もすばらしい。
「きみは月光の花と魔女に恋いこがれ/花なき里の夜の長さを知った」(『魔術師メルランの墓』

「死神めが日々顔を出す/――もう平均寿命にも達したようで/相手はやさしく皮肉っぽく笑う/――いや もう少し煙草をのみたいので/こちらはいささか未練たっぷり煙に巻く」(『秋海棠』)
「死がない生活は深刻だ/死がない人生は残酷だ」(『嬉遊曲』)
まだまだ続きます。こんなに暗い詩集も珍しいかもしれませんが、これほど美しい詩集もそうはありません。勧めてくれた一考さんに感謝します。



投稿者: 高遠弘美    日時: 2002年12月19日 17:46 | 固定ページリンク





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