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一考 | 中井英夫全集

 先日「稲葉真弓さんのことなど」で中井英夫さんの夕映少年に触れましたが、さっそく東京創元社から「中井英夫全集-5」が送られてきました。夕映少年、幻戯、星の砕片、星の不在などが収められた巻で、本多さんの解題には当時著した案内状の文章までが掲載されておりました。なんとも面映ゆく、一宵、中井さんのこと、田中さんのこと、しばらくの間お世話になった羽根木の流薔園のことなどを淋しく思い起こしました。

 ──この世には理解を拒み続けるがゆえに美しい魂というものも厳然と存在する。佶屈としてしかも不羈、ただただ瑰麗としかいいようのない孤独──

 中井さんとのお付き合いのなかで私の身体に刻み込まれたものは存在学的孤独。肝要な点は、にっと哄ってあの痛々しいまでの傲慢さを容認することでしかなかった折々の語らい。はにかみが微かな緑青となって浮かびあがった中井さんの貌。自らの肉体を生活と文学との通底器と化し、血塗れになって死んでいった中井英夫を私はどの面をさげて見送ればよかったのか。葬儀の日、「転々として可説不可説、想いだすのは知らぬことばかり、知ることと知らぬこととが転々として、くるくる虚空を舞う大法輪」愛する詩人の詩をくちずさみながら、ただただ途方に暮れていました。あの日、一人で酔い潰れるつもりが、新宿の浪漫坊で矢川澄子さんや相澤啓三さんと一緒になりました。情念と死について語り明かしたのもはじめてのこと。こころならずも密咒を呟き、はからずも白鳥の歌を刻むしかなかった人に、今生の思いはあるまじと、美酒一献・・・つらい日でございました。

 「中井英夫全集-5」がどなたからの贈り物なのかが分かりません。メールで結構ですのでご一報下さればありがたく思います。846頁もの大冊です。時間をかけて繙かねばなりません。ご送付に感謝致しております。



投稿者: 一考    日時: 2002年12月19日 11:11 | 固定ページリンク





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