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如月さんへ
「個人史の述懐にとどまらず、述懐のナラトロジーを自分でぶち壊して自己の根源に迫っていく迫力・・・私が好きなのは、この<つきつめる力>なのです」
すてきな言葉ですね。久しぶりに如月さんの肉声を目の当たりにして興奮。歴史は文学における梃子の力点のようなものです。力点がなければ文学から有効性は喪われます。いくら力でねじ伏せようと思っても、それは体力の消耗にしかならず、文学はたちどころに衰退します。
ナラトロジーを自ら壊すことによってのみ、語られた事実は虚構の事実へと昇華されて行きます。それが根源かどうかは私の与り知らぬところですが、貴方の仰る<つきつめる力>は十二分に理解できます。ただ、書き手にはその運動の質量は把握できても、方向性はまったく分からないのが常なのです。すなわちベクトルとしての体をなさないというところに問題が残ります。
かつて中井英夫さんの葬儀のあと、新宿の浪漫房にて彼女と情念についての論議を繰り返しました。思想より情念との表現を好むと。また、思想とは搏動であり、蠢きであり、立ち徘徊ることであって、方向性は意に介するようなものではないと。また、論理ないし論理回路は永遠に情念とは交わらないと。その結果が今回の出来事となりました。いかに読み解くべきか、大きな宿題を課せられたような気がします。
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