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高遠弘美 | 文楽

まつたくの素人の感想です。無視してくださつて構ひません。ご用とお急ぎでない方だけお附きあひ頂ければ幸ひです。今日、国立劇場で文楽「菅原伝授手習鑑」通し上演を見てきました。フランス語風に言ふなら「聴いてきた」entendre une comedieといふべきかもしれません。11時から21時まで。もう2時間もあればパリについてゐるくらゐの時間でしたから、長いと言へば長いのですが、さう苦にはなりませんでした。
文楽は観るごとにその魅力に目を開かれます(先週見た松禄襲名披露の歌舞伎はもうひとつでした。とくに勧進帳は新聞では褒めてゐましたが、さてどうでせう)。
人形遣ひで、吉田玉男、文雀、簑助、太棹で鶴澤寛治、義太夫で竹本住太夫、といふ五人の人間国宝が出てゐたのですが、83歳の玉男の遣ふ菅丞相の静と動、理性と狂気、簑助の女房千代のたをやかさと哀切、文雀の覚壽の勁さと真率さ、また、人間国宝でこそありませんが文吾の松王の激情と抑制、桐竹一暢の白太夫と武部源蔵の落ち着きと軽妙と悲哀にいたく心動かされました。
いままでもさういふところは素人ながら感じてゐたのですが、けふは義太夫の重要さに今更ながら気づきました。いままでぼんやりしてゐて気づかなかった太夫の藝の違ひが文楽の出来そのものを左右するといふことがわかつたと言へばいいでせうか。
けふ住太夫(77歳)は櫻丸切腹の段を語つたのですが、四ヶ月病気で休んでゐたとは思はれぬほどの充実ぶりで、フシもみごとなら人物描写もふかく、また鮮やかで、かういふ太夫を聴ける幸福を感じました。9月には住太夫の素浄瑠璃があります。それもぜひ行きたいと思ひます。
それに判つていらつしやる方には笑止千万と言はれさうですが、義太夫がしみじみと聞こえてくると、太棹もよく耳にはいつてくるのですね。住太夫の相方(さうは言はないでせうがともかく)の野澤錦糸、綱太夫と組んだ清二郎、伊達太夫(けふはまつたく不調でした)と組んだ寛治、十九太夫の相方をつとめた清治の三味線にはどきどきしました。とくにけふは錦糸と清治には脱帽です。今度は三味線の会にでも行かうかなどといふ不埒な気持ちが湧いてきたほどです。東京では次回は9月が文楽です。8月7日が予約開始。奥歯さん、今度は取れるといいですね。

追記。
柿沼様
もしこの掲示板をご覧ならメールを頂けないでせうか。たまたまけふの公演は映像収録してゐたやうです。NHKで放送する日時がわかりましたら、お教へ下さいませんでせうか。勝手なお願ひをご容赦ください。



投稿者: 高遠弘美    日時: 2002年05月18日 01:55 | 固定ページリンク





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